四国のみちと遍路
≪四国のみち≫ 【愛媛支4・四国カルストルート】

2015年12月28日
≪小田深山荘〜古味〜大野ヶ原休憩地〜ブナ原生林(28.8km)≫

          

≪Part3≫
『四国カルストルート【支4】では、大野ヶ原休憩地からはブナ原生林へと辿ることとなるのだが、往復7、8qを歩くとなると今日の宿泊予約地の姫鶴荘へは、明るいうちには辿り付けそうも無い。返す返すも、ここ大野ヶ原での宿泊場所が無いのが残念だ。』と、Part2で書いたのだが、やっと、その“ブナ原生林”ルートを辿る日がやってきた。

  
 11時24分、大野ヶ原休憩所の横のトイレ前に愛車をデポして、県道わきの案内板に従って、四国のみちへ進む。この道も、過去、数度通った事があるのだが、歩くのは初めてである。先程借りたトイレも真下に見える。前回『トイレの回収工事は終わっていたのに、“使用不能”だったトイレ』は、今回は既に“冬季、利用不能”期間に入ってしまっていて、またしても利用出来なかったのだ。

  
 林道を歩いて行くと≪四国カルスト県立自然公園 案内図≫の案内板が建っているが、ここは、“原生つつじ公園”の案内もあり、傍らに駐車場と、ツツジ園の案内図もある。そのすぐ先に、放牧場が広がる高原なのだが、今の時期、牛は牧場から里(といっても高地だが・・・)の牛舎へと戻っているので姿は見えない。

 
 11時58分傍らに、真新しい四国のみちの案内板が建っていた。牧場を横切るように道が伸び、向かい側の林へと続いている。ちょっとした鞍部へ差し掛かると、冷たい風が吹き抜けていた。5分ほどでブナ林の入口にあたるそこには、消えかかった字で、次の注意書きと、案内が書かれていた。

 四国のみち利用者の皆さんへ
 この付近に保存されている自然林は、四国カルスト県立自然公園(昭和39年21日指定)と小屋山県自然環境保全地域(昭和52年11月8日指定)になっています。また、高知営林局でもブナ保護林として保存することとしています。
 次の事項を守ってください。
1.歩道はブナ保護林休憩地までしか整備されていません。一般のハイカーはそこから先には進めません。
2.火気の扱いには十分注意してください。
3.植物を持ち帰ることはできません。
4.ゴミは自分で持ち帰りましょう。



≪小屋山・小田深山 林木遺伝資源保存林(ブナ保護林)≫
 「小屋山」・「小田深山」の両保存林は、互いに隣接し、四国でも有数のブナ林として、それぞれ「学術参考保護林」として設定され、平成2年3月からは「林木遺伝資源保存林」として現在に至っています。

 小屋山林木遺伝資源保存林    面積:1.88ha
 小田深山林木遺伝資源保存林   面積:6.60ha
                             愛媛森林管理署


  
 ブナ林の中、整備された道を行くと“学習の道”と呼ぶに相応しい看板に合う。それから先暫くで、12時16分、ブナ保護林の半分の距離の標識がある。

≪ブナについて≫
 ブナは、冷温帯を代表する落葉広葉樹で、北海道、本州、四国、九州に分布します。四国では、標高1,000m以上に分布し、1,800m付近が上限となっています。大野ヶ原のブナ林は、カエデ、ナラ、シデなどの落葉広葉樹と混生してます。


ブナ豆知識
 ブナの木の実は、三角形で、ソバのように見えることから、「木ソバ」と呼ばれます。その昔、「ブナの実一升、金一升」と言われていた時代がありました。高タンパク、高カロリーなブナの実は、食べるとおいしく、金と同じ価値があるとされたのです。もちろん、野生動物にとっては、重要な食糧です。ヨーロッパでは、家畜のブタを太らせるため、ブナの木の下で飼うそうです。



  
 “学習の森”のブナの看板を読みながら進むと、すぐ先の看板で黒い動物が走って行った。まだ子供の猪だった。ここの猪は学習が進んでいる事だろう。12時27分、≪この先、行き止まり≫の案内がある。しかし、相棒は今回は三脚を抱えて歩いて来た。という事は、これからじっくりと撮影タイムがあるという事を意味していた。


ブナ豆知識A
 ブナを漢字で書くと、木偏に無と書きます。なぜでしょう。それは、ブナは腐りやすい、狂いやすいなど、木材としての利用に適さなかったから、「木でない」とされたのです。その後、利用加工技術が発達し、曲げやすい性質を活かして、洋風家具やインテリアの材料などとして多く使われてきました。現在では、木材としての利用ではなく、希少な自然として、また、水源のかん養の役割など、ブナ林の大切さが認識されるようになっています。




≪森林の働き(水を蓄える力の比較)≫

 森林と草地、裸地とでは水を蓄える力が違います。雨水が森林の土にしみこむ量は、裸地の約3倍、草地の約2倍です。なぜでしょう。森林の地表の土は、落ち葉などでフカフカになっています。また、土の中にはモグラやミミズなどの小動物の通り道、根が腐った跡など、小さなすき間がたくさんあります。このスポンジのような状態が、雨水をたくさん吸い込んで蓄えるのです。森林は、雨水をゆっくりと時間をかけて川に流すので、洪水や水枯れを防ぎます。毎年、秋に葉が落ちて深い腐葉土を作るブナの林は、たくさんの水を蓄えています。


  
 葉を落とした広葉樹林は、すっかり明るい森だ。道は、ぐにゃぐにゃと、源流の沢部を回り込みながらも、北へと伸びている。しかし、先ほどの≪この先、行き止まり≫の標識の先で、沢の水は北へと流れていた。結局、東西へ尾根が伸びた場所が分水嶺で、西予市と内子町の郡境だった。


  
 “ぶな保護林”と書かれた案内杭には、≪大正十四年設定≫と書かれていた。随分と古い制定年である。もう90年以上にもなる。しばらくの相棒の撮影タイムも終わり、13時17分、帰路へと着いた。

 
 帰路、相棒が「お腹が空いたね」と言うが、吹きっさらしの場所では、休む気にもならない。往路には青空もあり、日差しが柔らかかったが、今は、粉雪まで混じる西風が吹いている。

  
 案内板にも描かれている≪源氏ヶ駄馬≫にある一夜ヶ森は、何故、あんな形であるんだろうか。14時15分、林道歩きは30分ほどだったので、ブナ原生林休憩地までの往復は2時間だろう。愛車のエンジンを掛けて、車内での遅い昼食だった。そして、往路は県道36号線を上がってきたが、押し迫った年の瀬にも関わらず、工事中通行止めの時間設定があった為、帰路は、足止めの無い、県道383経由を採った。


【過去の記録について】
 ブナ原生林の記録はコチラから→  2011年8月18日10月23日