TUGテストは,歩行能力や動的バランス,敏捷性などを総合したfunctional mobility(機能的移動能力)を評価するテストとして,Podsiadlo & Richardson(1991)が考案しました.その後,様々な研究者によって測定条件や距離が変えられ多くの研究成果が報告されています.2011年2月現在,TUGに関する論文をPubmedで検索すると,693件の報告がみられます.
私たちのグループもTUGテストを用いて7年くらい前から高齢者のトレーニング評価項目にして,毎回測定しています.先日の日本体育測定評価学会でTUGの標準値が公表されていないとお聞きしたので,このページを作成することとしました.
このページのリソースは日本運動生理学雑誌に投稿した私の論文(註1)からの引用です.標準値を利用していただくのはフリーですが,著書や論文に掲載される場合は必ず出典を明記してください.
出典:中谷敏昭・芳賀脩光・岡本希・車谷典男(2008)一般在宅健常高齢者を対象としたアップアンドゴー テストの有用性.日本運動生理学雑誌15(1):1-10.
※論文はCiNiiのページから取得できます(フリー)http://ci.nii.ac.jp/naid/110006649659
【方法】
(1)踵の低い靴か素足で行う.
(2)椅子の先端からミニコーンの向こう側までを3 mとする.
(3)椅子の中央部より少し前に座り,背筋は少し前屈みになる.
(4)両足は肩幅程度に広げ,つま先を左右そろえる.両膝の間を握りこぶしひとつ分くらい開き,大腿部前面に両手を置く.
(5)「用意」に続き「ハイ」の合図で立ち上がり,すばやく,ミニコーンに向かって歩き.ミニコーンを回ってきて,再び座る.
(6)目標物の回り方は,左右どちらのでもよい.
【記録】
(1)目標物の回り方を左右1回ずつ練習させ,好きな方向を決めさせた後にその方向で実施させる.
(2)「ハイ」の合図でストップウォッチをスタートさせ,ミニコーンをまわってきて,再び座ったのと同時にストップさせる.
(3)実施は2回とし,良い方の記録を100分の1秒単位で記録する.
(4)2回測定し,その差が0.5秒以上あった際は3回目を測定して,一番良い記録を用いる.
【注意】
(1)走らないように指示する.走ったと判断した場合は口頭で注意して,再度測定する.
(2)ミニコーンを回るときは,転倒しないように注意させる.
(3)再び座るときには,椅子の位置を確認させるとともに,後方や左右に転倒しないように注意させる.
※テスト法の詳細はフロントページの「健康づくり・介護予防としての「じきんじゅば」運動の勧めとその能力を評価する簡易体力テスト法!」をご覧ください(Youtube)
※この標準値は,地域在住の健康な高齢者を対象としたものです.特定あるいは要介護高齢者のデータは含んでいません.
※キーワード:TUG,アップアンドー,歩行,動的バランス,高齢者,トレーニング,移動能力