九鬼紫郎 著書リスト(試供版)

戸田和光 編


本リストについて

 今回は、一応はミステリ作家のリスト――なのだろうか?
 九鬼紫郎は、『探偵小説百科』なども手掛けているし、一般的にはミステリ作家という形で語られることが多いとは思うのだが、実際の著書で言えば、ミステリの数は決して多くない。戦中時期に間諜小説などを手掛けていたのはともかく、戦後は、時代小説の方が多くなっているのだ。しかも、昭和20年代には捕物小説(稲妻左近もの)が中心だったのに、30年代に入ると、ふつうの時代小説にシフトしている。加えて、当時の貸本小説作家と同じペースで量産した。ある意味で、鵺のような作家活動に見えて、とても整理しにくい作家なのは間違いないだろう。
 昭和50年以降、特に再評価もされなかったこともあってか、著書の古書価格は上がったままだし、加えて、貸本小説の形で刊行されたものは、流通した数も少なかったようで、その著書を実見することも至難である。とはいえ、現状の整理をしておくことは意味があるかも――との意識もあって、手元の情報をまとめてみたものである。
 本来であれば、短編についてもまとめておくべきなのかも知れないが、戦前のリストをまとめるのは難しい上、昭和20年代から30年代にかけて書かれた時代小説(捕物小説)は、とてもフォローしきれない(既に公開している稲妻左近もののリストの空白の多さがこの辺りの調査の難しさを物語っている)。ミステリ短編だけでは余りにも中途半端なので、今回は、着手しないことにした。ご理解いただきたい。

 そういった訳で、いつも以上にお粗末なリストになってしまったけれど、ミスや情報等がありましたら、ご指摘ください。


九鬼紫郎 著書リスト(小説のみ)

書名名義別題出版社出版年月区分備考
錦吾捕物帖 物言ふ人形 三上紫郎 熊谷書房 1941年12月 稲妻左近ものの原型
花火車 右近捕物帳 三上紫郎 金鈴社 1942年6月 稲妻左近ものの原型
元和太陽丸 三上紫郎 鶴書房 1942年
元和呂宋島 三上紫郎 大文館書店 1943年4月
姿なき間諜 三上紫郎 金鈴社 1943年4月
海の先駆者 三上紫郎 熊谷書房 1943年6月
怒濤の涯 三上紫郎 希望の窓社 1944年9月
間諜帝都に迫る 三上紫郎 金鈴社 1944年3月
変幻女絵師 三上紫郎 美文堂書店 1945年12月 『錦吾捕物帖 物言ふ人形』の4編を収録
人生の花ひらく 三上紫郎 湊書房 1946年1月
稲妻左近捕物帖 三上紫郎 八千代書院 1946年12月 『消えた藤娘』3編に「蛙男」を収録
消えた藤娘 九鬼 澹 熊谷書房 1946年12月 『花火車』の3編を左近ものとして収録
二人源三郎 九鬼 澹 かもめ書房 1947年2月 『花火車』の4編を左近ものとして収録
戦慄と恐怖 九鬼 澹 八千代書院 1947年5月
人工怪奇 九鬼 澹 湊書房 1947年10月
怪盗江戸小僧 九鬼 澹 八千代書院 1948年7月 『錦吾捕物帖 物言ふ人形』の紙型流用
失われた貞操 三上紫郎 湊書房 1948年11月
稲妻左近捕物帖 九鬼 澹 いなづま奉行 同光社磯部書房 1952年3月 稲妻左近
黒手組変化 九鬼紫郎 同光社 1954年9月 稲妻左近
金姫銀姫 九鬼紫郎 山怪秘文/謎の黄金秘境 豊文社 1954年11月
隠し小判 九鬼紫郎 文芸図書出版社 1954年11月 稲妻左近
月姫異変 九鬼紫郎 同光社 1954年12月
妖鼓盗賊 九鬼紫郎 怪盗秘文書(百万両異変) 文芸図書出版社 1955年1月 「蛇姫異変」併載(怪盗秘文書には再録されず)
どくろ大名 九鬼紫郎 同光社 1955年6月
黒潮大名 九鬼紫郎 同光社 1955年10月
稲妻左近捕物帖 大江戸謎草紙 九鬼紫郎 久保書店 1955年12月 稲妻左近
魔女の閨 九鬼紫郎 あまとりあ社 1956年7月
江戸の稲妻 九鬼紫郎 同光社 1956年
秘仏像伝奇 九鬼紫郎 まぼろし飛脚 同光社 1956年1月
おぼろ屋敷 九鬼紫郎 同光社 1956年3月
若衆七変化 九鬼紫郎 すつとび若衆 桃源社 1956年5月
はやて拳法 九鬼紫郎 同光社 1956年6月
心霊は乱れ飛ぶ 九鬼紫郎 東方社 1956年8月
からくり三万石 九鬼紫郎 同光社 1956年10月
秘録真田陰流 九鬼紫郎 同光社 1957年2月
続・秘録真田陰流 九鬼紫郎 同光社 1957年3月
金四郎桜 九鬼紫郎 同光社 1957年4月
おれは剣豪 九鬼紫郎 桃源社 1957年8月
若殿あばれ剣 九鬼紫郎 江戸っ子浪人 同光社出版 1957年10月
旗本無法街 九鬼紫郎 光風社 1957年11月
呪文塔の恐怖 九鬼紫郎 同光社出版 1957年12月
犯人はダレだ 九鬼紫郎 大東書房 1958年1月
京四郎剣法 九鬼紫郎 同光社出版 1958年2月
疾風京四郎 九鬼紫郎 桃源社 1958年5月
鍔鳴り京四郎 九鬼紫郎 同光社出版 1958年6月
恋かぜ大名 九鬼紫郎 白峰社 1958年10月
地獄の影 九鬼紫郎 同光社出版 1958年10月
怪剣鉄仮面 九鬼紫郎 同星出版社 1958年
拳銃無法地帯 九鬼紫郎 川津書店 1959年1月 白井青児シリーズ
浪人恋紅笠 九鬼紫郎 白峰社 1959年1月
暗黒街の令嬢 九鬼紫郎 川津書店 1959年2月 白井青児シリーズ
犯罪街の狼 九鬼紫郎 川津書店 1959年3月 白井青児シリーズ
まぼろし剣士 九鬼紫郎 大東書房 1959年4月
若殿京四郎 九鬼紫郎 同光社出版 1959年4月
魔女を探せ 九鬼紫郎 川津書店 1959年4月 白井青児シリーズ
暴れん坊奉行 九鬼紫郎 大東書房 1959年5月
夜の顔役 九鬼紫郎 川津書店 1959年6月 白井青児シリーズ
京四郎変化 九鬼紫郎 同光社出版 1959年6月
悪魔よ眠れ 九鬼紫郎 川津書店 1959年7月 白井青児シリーズ
受話器を刺す銃声 九鬼紫郎 白峰社 1959年9月
京四郎あばれ剣 九鬼紫郎 同光社出版 1959年9月
空手浪人 九鬼紫郎 同星出版社 1959年9月
旗本恋天狗 九鬼紫郎 白峰社 1959年10月
べらんめえ判官 九鬼紫郎 新文芸社 1959年11月
喧嘩白頭巾 九鬼紫郎 同星出版社 1959年11月
直参暴れ剣法 九鬼紫郎 白峰社 1959年12月
キリストの石 九鬼紫郎 女と検事 日本週報社 1960年12月
喧嘩次男坊 九鬼紫郎 豊書房 1961年6月
若さま変化旅 九鬼紫郎 豊書房 1961年7月
母恋い獅子 九鬼紫郎 豊書房 1961年8月
剣雲父恋峠 九鬼紫郎 豊書房 1961年11月
隠密同心 白鷺大吉忍秘抄 九鬼紫郎 久保書店 1965年7月 《オール読切》59年12月〜60年5月
大怪盗 九鬼紫郎 光文社 1980年2月
稲妻左近捕物帖 第1巻 九鬼紫郎 捕物出版 2022年8月
稲妻左近捕物帖 第2巻 九鬼紫郎 捕物出版 2022年9月
稲妻左近捕物帖 第3巻 九鬼紫郎 捕物出版 2022年10月
稲妻左近捕物帖 第4巻 九鬼紫郎 捕物出版 2022年11月
稲妻左近捕物帖 第5巻 九鬼紫郎 捕物出版 2022年12月
稲妻左近捕物帖 第6巻 九鬼紫郎 捕物出版 2023年1月
姿なき間諜 三上紫郎 大陸書館 2026年1月

 改めてお断りしておくと、このリスト自体が様々な情報を繋ぎ合わせただけで、実見していないものの方が多い。ご注意いただきたい。
 形式的に、三つに分けている。戦前、戦後、令和とである。令和のものは、当然ながら過去の本の再録(再編集)だが、現在最も入手しやすい九鬼本なのではずしにくいし、戦前のものもかなり変な形で戦後に再編集の上で刊行されているため、再録かどうかの機械的な整理が難しい。出版事情も多少違っているのは確かなので、それらの中で整理するようにしてみたものである。
 実際、『変幻女絵師』は、『錦吾捕物帖 物言ふ人形』の前半4編が収録されている(“巻ノ一”とあるので、残りの4編を収録したものも刊行された可能性もある)。同様に、『消えた藤娘』と『二人源三郎』は、『花火車』収録の7編を左近ものに直し、3編と4編に分けて刊行したものだが、(刊行順は逆だが、)昭和21年の『稲妻左近捕物帖』(三上名義)には、『消えた藤娘』収録の3編と、『物言ふ人形』収録の「蛙男」を同様に左近ものとして収録している。単なる再刊とも言いにくいため、このような形としていることを、ご理解いただきたい。こちらについては、随時稲妻左近捕物帖について もご参照いただければ幸いである。
 また、昭和30年代に、貸本小説の形で刊行されたものについては、すべてが新作であるか確認できていない(先行作の改題再刊の可能性がある)。実際、明らかに改題の上再刊された、と判断したものははずすようにしたが、その改題が作者の希望かどうかも分からないため、後から刊行されたものを「別題」という形で載せることにした。実際、『キリストの石』を『女と検事』のタイトルで語られるのを聞いた覚えがない。これは、やはり一般的に『キリストの石』で通用すると思っている。

 著書の数が圧倒的に増えているのは、貸本小説として刊行されたと思われる昭和30年代であることがわかるだろう。ただ、これがすべてだと言い切る自信は全くない。ミステリ(現代もの)については、先人がまとめた資料もあるので、たぶんこれがすべてだと思うが、時代小説については、他にあっても全く不思議はない。それを前提に、ご覧いただければ、と思う。もし、こんな本もあるよ、という情報をお持ちの方は、お知らせいただければ、今回まとめた意味もあるだろう、と思っている。

※東山純一氏にご教示いただき、不明だった本の収録作などが判明、また、新たな著書を追記した。これに伴い、説明文も直している。恐らく、まだ洩れは多いかと思われるので、更なる指摘を頂ければ幸いである(26.05.05 追記)


 こんなリストでも、多少は何らかの参考になると信じて、とりあえず、上げるだけあげました。指摘があれば、随時直して行きます。
 


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戸田和光