故・溪内謙教授・年譜
1923年9月2日生まれ。
1940年3月、金沢第一中学校四年修了。
同年4月、第四高等学校文科甲類入学。
1942年9月、同卒業。
同年10月、東京帝国大学法学部政治学科入学。
1943年12月、舞鶴海兵団入団。海軍二等水兵、海軍主計見習尉官、海軍主計少尉、海軍主計中尉を経て、1945年10月、予備役に。
1947年3月、東京帝国大学法学部政治学科卒業。
同年4月、東京大学大学院入学。
同年9月に大学院を退学して、東京大学社会科学研究所助手となる。
1951年4月、社会科学研究所退職。
同年5月、名古屋大学法学部助教授。
1956年6月‐57年5月、アメリカ合衆国に出張(この間の57年4月に教授に昇任)。この時期に、E・H・カーと知り合う。
1957年6月‐11月、出張期間を延長し、イギリスに渡る(最後の時期にポーランドとソ連を追加)。
1959年6月、悦子夫人と結婚。
1959年8月‐1961年1月、イギリスに出張。
1962年9月、『ソビエト政治史』刊行。
1963年11月、ソビエト政治史の研究に対して毎日学術奨励金受賞
1965年9月‐66年9月、イギリスに出張。
1968年4月、東京大学法学部に転任。
1970年8‐11月、ソ連およびイギリスに出張。
1970年11月、『スターリン政治体制の成立』第一部刊行。
1975年3‐10月、ソ連およびイギリスに出張。
1977年5‐6月、イギリスに出張。
1978年6‐7月、ポーランド、ルーマニア、チェコスロヴァキア、ハンガリー、ブルガリア、ユーゴスラヴィア、ドイツ民主共和国に出張。
1978年8‐10月、ソ連に出張。
1978年11月、著書『現代社会主義の省察』に対し、第32回毎日出版文化賞授与。
1984年3月、還暦記念論文集『ソヴィエト政治秩序の形成過程』刊行。
同月、東京大学を定年退官。
1984年4月‐89年3月、千葉大学法経学部教授。
1986年12月、『スターリン政治体制の成立』全四部完結。
1987年11月、初来日したヴィクトル・ダニーロフを迎える。
1989年4月‐90年3月、帝京大学文学部教授。
1993年4月、モスクワで国際会議「20世紀のロシア」(ロシア科学アカデミー・ロシア史研究所主催)に参加。
1997年6月、モスクワで国際会議「農業発展の現代的概念(理論セミナー)」(ロシア科学アカデミー・ロシア史研究所主催)に参加。
2000年10月、ダニーロフの2度目の来日を迎える。
2004年2月13日、逝去(享年80歳)。
同年11月、遺著『上からの革命』刊行。
著作一覧
【著書】
・『ソビエト政治史――権力と農民』勁草書房、1962年
(新版『ソヴィエト政治史――権力と農民』、岩波書店、1989年)
・The Village Gathering in Russia in the Mid-1920s, University of Birmingham, 1968.
・『スターリン政治体制の成立』(全四部)岩波書店、1970、72、80、86年
・『現代社会主義の省察』岩波現代選書、1978年
・『現代社会主義を考える』岩波新書、1988年
・『蘇維埃七十年――現代社会主義反思』(柯文軍訳)香港、商務印書館、1992年〔『現代社会主義を考える』の中国語訳〕
・『歴史の中のソ連社会主義』岩波ブックレット、1992年
・『現代史を学ぶ』岩波新書、1995年
・『上からの革命――スターリン主義の源流』岩波書店、2004年(遺著)
【編著】
・『現代行政と官僚制』上・下、(阿利莫二、井出嘉憲、西尾勝と共編)、東京大学出版会、1974年
・『ネップからスターリン時代へ』(荒田洋と共編)、木鐸社、1982年
・『ソヴィエト政治秩序の形成過程――1920年代から30年代へ』岩波書店、1984年
・『スターリン時代の国家と社会』(荒田洋と共編)、木鐸社、1984年
・『スターリン後のソ連社会』(荒田洋と共編)、木鐸社、1987年
【論文・研究ノートなど】
・「人民民主主義諸国の国法について――その国家権力機関の構造を中心として」『法学月報』(法学月報刊行会)1951年第3号
・「《紹介》ヴェ・ア・トレツキー『マルクス・エンゲルスにおける国家論の発展』」『思想』1952年9月号
・「ソヴェトにおける立法権の所在と立法手続」『ジュリスト』1953年5月1日号
・「社会主義国家論における若干の問題」『(季刊)理論』第21号、理論社、1953年7月
・「ソヴェト行政における統制組織の発展」東京大学『社会科学研究』第4巻第3号、1954年
・「ソヴェト公務員制の基本的特質」鵜飼信成、辻清明、長浜政寿編『比較政治叢書』第1巻(公務員制度)、勁草書房、1956年
・「ソ連における市民と市政」『都市問題』(東京市政調査会)第47巻第3号(1956年3月)
・「立法過程にあらわれたソヴェト制の特質について」鈴木安蔵ほか著『ソヴェト制の研究』勁草書房、1956年
・「ソ連邦における日本研究について」『日本政治学会年報・1956年度(政党・選挙・大衆)』岩波書店、1956年
・「ソ連邦の統治構造と外交政策」『日本政治学会年報・1959年度(対外政策の決定過程)』岩波書店、1959年
・「社会主義の現実と理論の転換――政治学におけるマルキシズム」『中央公論』1959年9月号
・「ソビエト・ロシア農村の統治構造(1917‐1922)」名古屋大学『法政論集』第17号、1961年
・「現代ソビエト研究序説」『中央公論』1962年3月号
・「フルシチョフ首相」『中央公論』1963年9月号
・「V冷戦の政治的条件 2冷戦と国内政治体制 二ソ連」『岩波講座現代』第6巻(冷戦――政治的考察)、岩波書店、1963年
・「X冷戦における冷戦観 2東側のアメリカ・西欧観と資本主義観 一東側の冷戦観、二ソ連・東欧」『岩波講座現代』第6巻(冷戦――政治的考察)、岩波書店、1963年
・「1927年の農村ソビエト選挙――工業化と農民・序説」1・2、名古屋大学『法政論集』第25号、1963年、第26号、1964年
・「歴史としての中ソ論争」『現代の理論』1964年10月号
・「フルシチョフ時代の終焉か」『世界』1964年12月号
・「ソ連邦の官僚制――若干の問題点整理へのこころみ」『思想』1965年1月号
・「ネップ期のソ連」『岩波講座世界歴史』第26巻(現代3)、岩波書店、1970年
・「第一次五カ年計画とソ連」『岩波講座世界歴史』第27巻(現代4)、岩波書店、1971年
・「ソ連邦の党官僚制――1930年の改組を中心として」溪内謙、阿利莫二、井出嘉憲、西尾勝編『現代行政と官僚制』上、東京大学出版会、1974年
・「現代社会主義の省察」『世界』1976年1、3、4、12月号、1977年1、3、4、8、10、11月号、1978年5月号に連載〔後に同名の単行本に収録〕
・「E・H・カー氏のソヴィエト・ロシア史研究について」(カー『ロシア革命――レーニンからスターリンへ、1917‐1929年』解説)岩波現代選書、1979年〔後に、岩波現代文庫版、2000年に最終節を補筆して再録〕
・"A Note on the Ural-Siberian Method," CREES Discussion Paper, Soviet Industrialisation Project Series, no. 17, Centre for Russian and East European Studies, The University of Birmigham, 1979〔後に、Soviet Studies, vol. 33, no. 4 (October 1981)に掲載する論文の元原稿〕
・"A Note on the Ural-Siberian Method," Soviet Studies, vol. 33, no. 4 (October 1981)
・「ソ連邦統治構造史の一断面――『上からの革命』と農村行政の変容」法学協会編『法学協会百周年記念論文集』第1巻、有斐閣、1983年
・「E・H・カーとロシア革命」『世界』1983年3月号
・「『上からの革命』と農村統治構造――1930年春のソヴィエト選挙」溪内謙編『ソヴィエト政治秩序の形成過程』岩波書店、1984年
・「エリツィン政権とロシア現代史学」『学士会会報』第802号(1994年第T号)
・Система уполномоченных -- партия, советы и аграрная коммуна // Россия в ХХ веке. Историки мира спорят. М., 1994.
・"Decision-Making on the
Ural-Siberian Method," in Soviet History, 1917-1953: Essays in Honour of R. W. Davies, edited by J. Cooper, M. Perrie, and E. A. Rees,
・「ソヴィエト史における『伝統』と『近代』――『上からの革命』の一断面」『思想』1996年4月号
・К истории коллективизации сельского хозяйства в СССР: государство и община// Россия в ХХ веке. Судьбы исторической науки. Под редакцией
А. Н. Сахарова. М., 1996.
・「『ウラル・シベリア方式』の政策形成過程」『国家学会雑誌』第111巻第5=6号(1998年)
・「スターリン主義の起源に関する一考察」『思想』2003年8月号
【翻訳】
・エス・エフ・ケチェキアン「イ・ヴェ・スターリンの労作『マルクス主義と言語学の諸問題』の政治学説史における意義」『言語問題と民族問題(季刊理論 別冊学習版第U集)』1952年12月〔原著は、С. Ф. Кечекян. Значение труда И. В. Сталина "Марксизм и вопросы языкознания" для истории политических учений //Советское
государство и право, 1952, 3〕
・エフ・テ・コンスタンチーノフ「人民民主主義国家論(ブルガリアを中心として)」高橋勇治、戸沢鉄彦編『人民民主主義の研究』上、勁草書房、1955年所収〔原著は、Ф. Т. Константинов. Болгария на пути к социализму. 2-е
изд., 1953, гл. 7 и заключения〕
・エス・エス・ストデニキン『ソヴェト行政法(ソヴェト法律学大系3)』(稲子恒夫と共訳)巌松堂書店、1956年〔原著は、С. С. Студеникин. Советское административное право. М., 1949.〕
・ア・イ・デニソフ編『ソヴェト国家と法の歴史(ソヴェト法律学大系・別巻2)』上、巌松堂書店、1956年〔原著は、История советского государства и права. Под редакцией А. И. Денисова. М., 1949.〕
・ジャコブ・ミラー『ソビエト・ロシア』(早瀬武と共訳)勁草書房、1961年〔原著は、Jacob Miller, Soviet Russia: An Introduction, Hutchinson and Co., 1955.〕
【書評】
・E・H・カー『カール・マルクス』『朝日ジャーナル』1961年3月26日号
・E・H・カー『一国社会主義(1924‐1926)』U(洋書)『朝日ジャーナル』1961年9月17日号
・R・ダニエルズ『ロシア共産党党内闘争史』『朝日ジャーナル』1968年2月11日号
・アンドレ・グリュックスマン『現代ヨーロッパの崩壊』『図書新聞』1981年7月11日号
・シモーヌ・ド・ボーヴォワール『老い』『朝日ジャーナル』1982年6月18日号
【その他】
・「研究余話――毎日学術奨励金を受けて」『毎日新聞』1963年11月6日夕刊
・〈共同アピール〉「チェコ事件について世界の知識人に訴える」『世界』1968年10月号に署名
・「レーニンとテロリズム」『世界』1972年9月号
・「思想の言葉」『思想』1979年2月号
・「研究結果報告書」『東京大学法学部研究・教育年報』第6号(1979‐1980年)、1981年
・「歴史の中のポーランド問題」『毎日新聞』1981年7月3日夕刊
・「序」溪内謙、荒田洋編『ネップからスターリン時代へ』、木鐸社、1982年
・「学術書の売れ行き」『学士会会報』第761号(1983年第W号)
・「辻清明先生を偲んで」『みすず』1991年12月号
・「プレトニョフの選択」『UP』(東京大学出版会)第236号(1992年6月号)
・「思想の言葉(スターリン死後40年――二つの評伝によせて)」『思想』1993年3月号
・「田中英夫先生追悼」『田中英夫追想文集』非売品、1993年
・1994年読書アンケート回答『みすず』1995年1月号
・座談会(佐々木力、桑野隆と)「ロシア革命と現代」『思想』1996年4月号
・私の三冊(トルストイ『戦争と平和』、レーニン『帝国主義』、トロツキイ『文学と革命』)『図書』1996年臨時増刊号
・「遠くて近い友」阿利莫二追想集刊行委員会編『回想の阿利莫二』公人社、1996年
・1996年読書アンケート回答『みすず』1997年1月号
・「ソヴィエト史の新しい世代」『窓』(ナウカ書店)第100号(1997年3月)
・私の薦めるこの一冊(E・H・カー『歴史とは何か』)『図書』1997年臨時増刊号
・1997年読書アンケート回答『みすず』1998年1月号
・Современные концепции аграрного развития: Теоретический семирар //Отечественная история, 1998, 6における会議中の発言
・1999年読書アンケート回答『みすず』2000年1月号
・「思想の言葉(革命と平和――ソヴィエト史における1920年代)」『思想』2000年11月号
・2000年読書アンケート回答『みすず』2001年1月号
・「思想の言葉(E・H・カー『ソヴィエト・ロシア史』について)」『思想』2002年12月号
・「田中真晴さんとの出会い」田中真晴先生を偲ぶ会編『追想 田中真晴先生』非売品、2002年
・2002年読書アンケート回答『みすず』2003年1=2月号
・2003年読書アンケート回答『みすず』2004年1=2月号
*この資料の作成には、佐々木武〔東京医科歯科大学〕、奥田央〔東京大学経済学部〕、河本和子〔日本学術振興会特別研究員〕、浅岡善治〔宮崎大学教育文化学部〕、各氏のご協力を得た(塩川伸明)。