「サカルトヴェロ(グルジア/ジョージア)」と「ハイアスタンあるいはハヤスタン(アルメニア)」
最近の日本では、外務省の新方針をうけて、マスコミなどでも「グルジア」という呼び方をやめて「ジョージア」に代える傾向が強まっている。確かに「グルジア」というのはロシア式の呼び名であって、現地式ではない。だが、それをいうなら「ジョージア」という英語式の呼び名も現地式でない点では同列である。ロシア帝国主義への従属は忌むべきだが、アメリカ帝国主義への従属は歓迎するというのも奇妙な話である。本来なら、「サカルトヴェロ」という現地式の表記にするのが筋が通っているが、この表記は現段階ではあまりにも馴染みが薄く、大多数の読者に理解されないという問題がある。とするなら、暫定的な便法として「サカルトヴェロ(グルジア/ジョージア)」といった書き方をするしかないように思える。
これにならって考えるなら、通常「アルメニア」と表記されているその隣国も、現地式を想起して「ハイアスタンあるいはハヤスタン(アルメニア)」とした方がよいのかもしれない。
考えてみると、「カフカース山脈」というロシア式の言い方と「コーカサス山脈」という英語式の言い方は、特にどちらをとらねばならないというような論争なしに、それぞれの筆者の好みや癖で適宜混用されてきた。
とするなら、「ザカフカース(トランスコーカサス/南コーカサス)にはサカルトヴェロ(グルジア/ジョージア)、ハイアスタンあるいはハヤスタン(アルメニア)、アゼルバイジャンという3カ国がある」といった書き方がよいのではないかという気がしてくる。
もちろん、これはあまりも長ったらしい表現で、いちいちこのように書くのは煩瑣すぎる。とりあえずの対応としては、このようなことをどこかで断わった上で、後はどの表記をとっても同じことだと考えるしかないのではないだろうか。
(2015年7月)