イボタノキ                            
Ligustrum obtusifolium Siebold et Zucc.  
印西市武西 八千代市平戸狸穴
 イボタノキは虫媒花である。通常虫媒花の花粉生産量は少ないから、化石の出現率が5%を越えることは稀なのだが、勝田川低地の花粉分析をして、イボタノキ属花粉の出現率が10%を越え、花粉塊まで含まれていたこと(Kap-IB亜帯)があった。これらのことは地層堆積当時、試料採取地点のすぐ近く(おそらくは2〜3m以内)にイボタノキの仲間の藪があったことを示している。この時同層準で、花粉塊も伴ってハンノキ属とトネリコ属花粉も多産していた。花粉形態からそれぞれ、ハンノキとヤチダモと思われ、どちらも湿地林を作る。イボタノキ属花粉はこれらの湿地林に低木として生えていたイボタノキに由来するのではないか。そんな風に考えて納得した。
 イボタノキは八千代市周辺では、イヌシデ-コナラ林の林縁で見られることが多い。こうした場合花粉化石が高率で出現したり、花粉塊が産出したりすることは考えにくい。この分析結果はイボタノキのもう一つの生き方に気づかせてくれるものとなった。


赤道観 赤道観(発芽溝) 極観
 発芽溝は3本、表面は粗い網模様で覆われる。網目は発芽溝付近で急激に細かくなり、突然断ち切られる。ハシドイ属花粉と良く似ているが、ハシドイ属の網はやや細く、網を支える柱(colmella)の水平断面が、ハシドイ属は円形、イボタノキ属は楕円形である。
 イボタノキのL-Oパターン
→4へとピントの位置を下ろすとColmellaが現れる。Columellaの水平断面は上部(2・3)は楕円形で太く、下部(4)では細くなる。



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