無重力状態の説明(再)  

(2014年12月13日)


 
    図ー1 宇宙ステーションの中の山崎宇宙飛行士と野口宇宙飛行士

 図ー1は宇宙ステーションの「きぼう」の中で山崎宇宙飛行士と野口宇宙飛行士が無重力状態の様子を見せている写真です。

 宇宙ステーションは高度400Kmの上空を飛行しています。地球の重力はこの高度でも地表面の89%ほどの大きさです。なぜ無重力状態になっているのでしょうか。



図ー2 無重力状態の説明(ニュートン誌から)

 図ー2は地球を周回する宇宙ステーションの中が無重力状態になる説明を図解したニュートン誌の説明です。つまり、重力は遠心力で打ち消されているというのです。果たして、その証拠はあるのでしょうか。
 本によっては単純に重力は遠心力と釣り合って(力の釣り合いで)無重力状態になっているという説明です。

 もし、宇宙ステーションが円軌道でなく、楕円軌道であったらどうでしょうか。宇宙ステーションの中が無重力状態であることは変わりません。しかし、重力と遠心力は少しも釣り合っていません。宇宙ステーションの位置によって重力の方が遠心力より大きいときと小さいときが常に入れ変わります。従って、図ー2では括弧書きにもありますように、重力を打ち消しているのは遠心力というより慣性力といった方が一般的です。

 ニュートン誌が力の釣り合いと言わずに打ち消しあっているという表現をしたのは、力が働いていないということを表現したかったからでしょう。しかし、力が釣り合っていると言おうと、打ち消されていると言おうと、その証拠はまったくありません。分子レベルで釣り合っている(打ち消しあっている)から、実証できないのだという説明がなされるかもしれません。しかし、物理では実証されて始めて正しい理論と認められます。

 それでは、はじめに戻って宇宙ステーションの中が無重力状態になっているのはなぜでしょうか。それは、アインシュタインが1907年に思いつき、自身が生涯最大の発見であったと語ったことです。重力は自由落下により消えているからなのです。

 宇宙ステーションは地球を周回する円軌道上を飛行していますが自由落下していることに変わりありません。宇宙ステーションは、水平方向に大きな速度を持っているのでいつまで落下しても地上にたどり着かないだけなのです。

 それでは、自由落下によりなぜ重力は消えてしまうのでしょうか。それは、重力は力ではないからです。重力は全ての物体に運動変化を与えるだけなのです。その大きさが重力加速度なのです。

 数式上は重力加速度が遠心力加速度に等しいということです。これは惑星などの天体の観測で実証できます。実際は逆に天体観測のデータから、重力加速度の式が導かれたのです。

 重力と遠心力が釣り合っているという説明は、重力加速度と遠心力加速度の等式の両辺に同じ質量を乗じて重力と遠心力が等しいとした説明をしているわけですが、数式上は正しいのですが、実証もされていない無意味の式でしかありません。

 力の定義として「運動を起こす原因となる作用」とするだけなら重力も力の一種で、ベクトルで表現できます。しかし、物体に力が作用すると運動だけでなく応力・歪みを生じることが力であることの要件です。

(了)


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