今井功の早合点  

(作成:2011年7月24日)
(修文:2011年12月8日)


  今井功著「古典物理の数理」(岩波書店、2003年)の23頁に次のように書かれている。

 「法則(経験) 地上の物体はその質量mに比例する一様な力mgを受ける。この’法則’を仮定すれば。運動方程式(2.10)の右辺のfは既知となり、地表付近での任意の物体は(2.10)を解くことによって’予測’される。その予測が実際と一致することから、上の’経験法則’は正しい’法則’として通用することになる。この法則に付随して、次の定義がなされる。
 定義2.4 上の法則に現れる力mgを重力、g重力の加速度gの向きを鉛直下向きという。」

 ニュートンと同じく早合点は「地上の物体はその質量mに比例する一様な力mgを受ける。」という記述である。地上の物体は一様な加速度gを受けるということは確かである。(国土地理院も測定している。)しかし、力を受けるというのは、質量mに加速度があれば、力を受けているというのは早合点である。重力加速度に質量を乗じた’力’は見かけの力でしかなく、如何なる方法をもってしてもその力は検知できない。

 重力の場合、重力による運動を止めた場合に慣性力mgが働くのである。運動を止めなければ力は働かない。(力が働いている証拠がない。)このことは無重力場で一定の速度を持つ物体は何時までもその速度を変えないが、物体の速度を止めるときに慣性力が働くのと同じである。止めなければ物体に力は働いていない。

(了)


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