すっきりが、いい。1993年と、新しいローレル。


C34ローレルについて


C34ローレルとは、日産自動車がかつて販売していた乗用車"ローレル"の7代目に当たるモデルです。
ローレルは1968年に初代C30型が登場、8代目生産終了の2003年まで35年間の長い歴史を持つ、
一時は日本人の誰もが知っていた、日産を代表する車種の一つでした。

C34ローレルは、その長い歴史を持つローレルの7代目、1993〜1997年に生産されたモデルです。
ヒットした前型C33とは打って変わって、飾らずシンプルな造形、
当時のライバル車種と比べると、異様に角張ったシルエットを持ちます。
最大のライバル、トヨタマークUが当時スポーティ路線で成功を収めたのに対し、
C34ローレルは飾らない上質さ、室内空間の快適さを追求した姿で世に現れました。
周りに主張しない高級志向が一部の自動車評論家には好評だったものの、
商業的には失敗、世の認識は”不人気車”で通っています。
もちろん、こだわりを持って作り上げられてインテリア、スタイルより優先された実用性は良いものを持っています。
内装の生産品質は世界一を目指したクルマだった、そんな話を当時このクルマに関わった人に伺ったことがあります。
しかし、時間が経ってもその魅力は世間に認められることなく、今日に至ります。

そんなクルマがC34ローレルです。


そんなローレルに魅せられた私より、C34ローレルに興味を持った方々へ向けて簡単に解説していきたいと思います。


C34ローレルの前期・中期・後期について

C34ローレルの前期・中期・後期について、ここでまとめておきたいと思います。

前期
MedalistV 20E CLUB S
GrandCruise MedalistV
1993年1月に登場した初期型のC34ローレル。
外観上の特徴はヘッドライトから同じラインでつながるグリルと、サイドに回り込まないテールランプ。
オーディオは、ほとんどのグレードで、汎用DINサイズではなく、専用にデザインされた電子チューナーラジオが採用されます。
木目やメッキ調の部品も少なめ、飾りすぎず、すっきりシンプルで上品にまとめられています。
私、個人的には前期が好きですが販売期間が1年ということもあり、後期型に比べて昔からあまり見かけない印象です。
スポーティグレードのクラブSはグリルがボディ同色に、ボンマスが専用バッジに、リヤスポイラーは小型のものが装備されます。
ターボ車はまだ設定されていません。RB25DEが一番スペックの高いエンジンです。
5月、マイナーチェンジを待たず、RB25DEしかなかったクラブSにRB20E仕様が追加されます。

中期
25MedalistV 25CLUB S TURBO TypeX
1994年1月にプリマイナーチェンジを受けたC34ローレル、俗に中期型と呼ばれます。
ターボ車がクラブS系に追加されたのが大きな変更点です。
外観上の特徴は、メダリスト系ではグリル中央に縦線が追加されます。
これは前期グリルの上から重ねて装着されているので、簡単に脱着可能。街では取り外されている個体も見かけます。
クラブSは新デザインのフロントバンパー・グリルになり、ボンネットのバッジが無くなります。
カラーバリエーションも変更があるのでそこでも見分けられますが、ここではあまり細かい話は省略しましょう。

メーカーが”プリ”マイナーチェンジと称している通り、後期型へ向けての先行マイナーチェンジで、
中期型の販売期間は9か月とかなり短いです。
その背景は、スポーティ路線で好調なマークUに対し伸び悩むローレル販売台数を改善すべく、
スポーティグレードであるクラブS系の魅力向上、ラインナップの充実を早急に実施したかったのだと考えられます。
デビュー当初、クラブSはRB25DEの1グレードのみでしたが、RB25DET、RB20Eの追加と装備の見直しにより、
ここで5グレードに増えています。

後期
25MedalistV TURBO 25MedalistG
25CLUB S TURBO TypeX 25MedalistV TURBO
1994年9月にマイナーチェンジを受け、後期型になります。
外観上の特徴は、ヘッドライトとグリルが独立したデザインになり、テールランプはサイドまで回り込ませ、
リアフェンダー、リアバンパーの造形変更を行い、ワイド感を強調したデザインになります。
メダリスト系にもターボ車が追加されます。
メダリスト系でも、ターボ車はバンパーがクラブS系と同じものになるのが特徴です。(左上の写真)
バンパーは中期と同じものです。リヤスポイラーは大型のものに変更されました。
内装もデザインは大きく変わっていないものの、大きく仕様変更が行われています。
配色の変更、木目調やメッキ調部品の追加、アナログ時計をデジタル時計に置き換えに加え、
ドアやピラーなどのトリムがソフト→ハード材に変更されています。
オーディオも、ここでほとんどのグレードが汎用DINタイプに変更されます。

1996年5月にもマイナーチェンジを受けます。
このマイナーチェンジは世間にあまり認識されておらず、
一部の有識者ではこれ以前を”後期の前期”、以降を”後期の後期”と区別していまが、俗にはどちらも後期です。
このマイナーチェンジの認知度が低いのは、変更内容が細かい装備変更や部品変更による低価格化が主で、
わかりやすい外観上の変更がボディカラーぐらいだからです。
特別仕様車としてセレンシアという新たなグレードが加わりました。
こちらは専用デザインのグリルなので、下に画像を載せておきましょう。
Cellencia
少し難しい話をすると、この1996年5月以降を後期型とする考え方もあります。(メーカーはこの考え方)
俗にいう中期型がプリマイナーチェンジという位置づけの為です。
その場合、1994年9月までを前期、1996年5月までが中期になります。余談でした。


搭載エンジンについて

C34ローレルに搭載されたエンジンをご紹介します。


PLASMA-RB25DE
RB25DE
ローレルのメインエンジンとして設定された、直列6気筒2500ccDOHCエンジン。
C33やR32の旧世代から、可変バルブタイミングコントロールシステム(NVCS)の採用やヘッド改良など、
比較的大規模な改良により、10psアップの190ps/6400rpm 23.5kgm/4800rpmという性能になります。
私は好きなエンジンですが、トルクピーク回転数がやや高く、
ゆったりというより回転を上げて元気よく走らせるのに適したエンジンです。


PLASMA-RB20DE
RB20DE
前期と中期(93年1月〜94年9月)に搭載された直列6気筒2000ccDOHCエンジンです。
C33からカムプロフィール、点火時期(ハイオク→レギュラーに変更のため)の変更等にとどまり、
C33・R32世代からキャリーオーバーのエンジンともいえるでしょう。
性能は150ps/6400rpm 18.6kgm/5200rpm
5速ATと組み合わされ、RB20E搭載車+24万円と高価(ちなみにもう7万円でRB25DEになります)
かつ、RB20DE搭載車の設定は中期までの1年9か月間のみ、珍しいエンジンです。


PLASMA-RB20E
RB20E
直列6気筒2000ccSOHCエンジン。C34ローレルで最も世に多く出たエンジンです。
こちらもC33からカムプロフィールの変更と騒音対策程度と大規模な改良は行われていません。
125ps/5600rpm 17.5kgm/4400rpm パワフルとは言えませんが、
RB20DEより速い、静粛性が高いなど評判のいいエンジンです。
生産数は多いはずですが、近年はむしろ珍しい存在となってきましたね。


PLASMA-RD28
RD28
直列6気筒2800ccのディーゼルエンジンです。
ラインナップの中では経済性を重視したエンジンで、上級グレードには搭載されません。
C34ローレルでは唯一、このエンジンが搭載されるクルマは5速MTを選択することができます。
100ps/4800rpm、18.2kgm/2400rpm。


PLASMA-RB25DET
RB25DET
直列6気筒2500ccのターボエンジンです。
C34ローレルデビュー当初は搭載車が存在せず、中期で追加されたエンジンです。
ローレルは、"リニアチャージコンセプト"というターボを意識させない、自然なフィールを目指し、
過給圧は抑えられ、出力もスカイラインより抑えられています。
そうは言っても235ps/6400rpm 28.0kgm/4800rpm、RB25DEと比べターボの存在は偉大です。



トランスミッションについて

C34ローレルに搭載されたトランスミッションについてご紹介します。


フルレンジ電子制御5速オートマチック
FULLRANGE 5E-AT
型式はRE5R01A。RB25DE及びRB20DEと組み合わせられるトランスミッションです。
C33から存在するトランスミッションですが、当時は4速ATが主流であり
このジャトコ製トランスミッションは世界初の乗用車用5速ATです。ローレルの特徴の一つとも言えます。
私はこのトランスミッションがとても気に入っており、
4速ATに比べ、1速はローギヤで力強い発進、クロスレシオで滑らかなシフトアップ、
思い切って小さなファイナルギヤを入れることができ、100km/hでおよそ2000rpmで巡行できる静粛性。
素晴らしいです。少し語りすぎました。
残念ながら1996年5月のマイナーチェンジで廃止、次期型のC35には搭載されませんでした。
近年は部品入手が困難になってきており、維持の危機に面しています。



フルレンジ電子制御4速オートマチック
型式はRE4R01A。RB25DET及びRB25DE(1996年5月以降)、RB20E、RD28と組み合わされるトランスミッションです
当時主流の電子制御4速ATです。特筆すべきポイントは特にありませんが、
許容トルクの大きさからRB25DETにはこのトランスミッションが組み合わされます。
ローレルの中でもエンジン特性に合わせ複数の変速比設定が存在します。



5速フロアシフト
型式はFS5W71C。RD28と組み合わされるトランスミッションです。
あまり知られていませんがC34ローレルにもマニュアルトランスミッションが存在します。
ディーゼル車のみの組み合わせになりますが、
これによってC34ローレルにもマニュアル用のコンソールやメーターが存在します。
容易に想像できるかと思いますが、生産数は少なく、かつ北海道での登録が多いようで、
ボディ腐食などにより長持ちせず、現在ではかなり希少な存在です。



販売台数について

C34ローレルげ登場した、1993年の販売台数です。

本当はC33の頃やC34マイチェン後まで追っていきたいところですが、
20年以上も前の車種別販売台数を調べるのは結構な労力で、ここで力尽きました。
C34ローレル、不人気車のレッテルは貼られているものの、
当時はこのクラスの市場が大きく、強力なライバルたちの中で劣勢であっただけで、
頭数がいわゆる”珍車”ほど少ないわけではなく、街中で普通に見かける存在でした。
マークUが2019年現在でいうアクアだとしたらデミオくらいの販売台数がローレルのイメージです。
不人気車、というレッテルだけが独り歩きしているように感じられますので。
ただ、2025年現在は間違いなく”珍車”ですね。






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