連載-ボートデザイン開発編(第10回)


 
試作、試験、評価、承認作業(基本設計図決定:PHASE-5)
●同型船建造を行う場合の必要作業を検討する。(稟議) ●量産図面作成検討、生産管理検討、品質管理、フィールドサービス体制検討 ●試作艇の図面を修正し、生産用図面を作成し出図する。 ●試作艇の変更個所を解説し改訂通報として発行。 ●関係部署を召集し、試作艇の変更個所を説明し注意事項を伝達 ●量産、姉妹艇は現地で船体検査を受験するので技術者は関連部品の予備検査を受け 承認 資料を準備する。(主機、燃料タンク、安全備品他) ●実際に生産が移行したら開発担当者は可能な限り生産初号艇の製造に立会い改善個 所に 対応しジグ作成や図面を修正し必要なら改訂通報を発行。 ●量産の場合最初の数艇の生産をフォローすると製造工数が飛躍的に低減可能。 ●最近は例が少ないが量産数が多い場合には別工場で追加生産を行う場合がある。  また仕様が地方に特化した量産艇も製造委託をすることもある。 ●開発者はこれらの委託に積極的に協力する。 ● 開発担当者の量産フォローは重要でコスト低減のため設計改編や市場クレームへ対応  することで売上げは上昇し事業の成功に結び付く。 ●生産フォローでの成果が小さくなったらマイナーチェンジの準備をする。  外観は大きく変更しないで、室内艤装や細かな機能を改善する場合が多い。  実際のマイナーチェンジ時期は営業部門の判断による。  マイナーチェンジの開発作業は特に大きな設計工数は考慮せず他の開発作業の合間で  実施する。 ●量産艇の生産は10月頃から開始されるが実販は3月以降である。 ●小型船舶は生産性が低く製造したボートを一定期間保管することが必要。  ●FRPは製造後およそ3ケ月樹脂が完全に固まっていないので保管する場合は ●変形が少ない船台を準備し、長期間の保管が予想される場合は風雨や紫外線による  劣化を防ぐ目的でボートカバーやシュリンクラップと称するプラスティクの皮膜で 覆う。 6-1 生産用図の作成(改訂、型改造、生産移行説明) 量産開始に備えて設計や製造部門も最終的な準備が始まるが試作艇で発生した不都合 箇所はすべて修正し、図面は改定通報を添えて関係部署に通知する。 また生産技術部門では製造ラインが無理なく稼働し、また品質を保って生産できる為 の準備を行う。 例えば試作で離型に時間がかかり過ぎる場合はその対策を行い型の改造を行うことも ある。 またガラス繊維の裁断は型紙や型板を作成し材料の無駄を省きコスト低減も図る。 資材加工に関するジグや関連資料の作成は重要だ。 資材部門も量産に備えて資材発注を行うが納期が長い輸入部品はリードタイムを把握するのが重要だ。   ボート部品に限らないが部品メーカーは効率良く生産するためにまとめて生産する場 合も多く、年に2ケ月しか生産しない場合はこれらも考慮してまとめ買いをしなければ ならず、その判断は設計と良く打ち合わせなければならない。 これらの問題点は生産移行会議などでお互いそれぞれの部門の課題や問題点として 認識しておくのである 6-2 生産試作問題点会議 これでいよいよ量産へ移行するのであるが最初の数十隻までは何かと問題が発生する ので関係者が現場で立会うことが重要で、この時点で問題点を解決し更に生産性が高 まればメーカーにとって利益の高い商品となり、お客にとっても品質の高い商品とな る。 6-3 量産移行(改訂通報、マーケッティングニュース) 量産が軌道に乗っても各部門は忙しい。 特に問題点がなくても現場からは更なる改善提案などが提出され、採用されれば設計 は図面を改定しなければならない。 また毎年3月を過ぎ顧客に実際に販売されたボートが走り出すと市場から営業部門を 経由してマーケッティングニュースが上がってくる。 市場での高い評価は良いが改善要望が多い場合は対策の必要性や対策時期などを回答 せねばならず、量産数の多いボートを開発すると量産後1年間、設計者はその対策で 忙しく開発担当者が対応する改定通報の発行数は数百枚を越える場合もある。 6-4 品質管理 量産ボートの品質管理は大変重要である。 市場で部品を交換する必要が発生した場合、取り替えが簡単に行なえるか、市場で 同型艇が並んだ場合、違いが合ってはならない。 メーカーのブランドに合致した管理が行なわれているかは極めて重要な項目である。 量産ボートの品質管理は乗物としての安全性は最重要項目であるが、事業である限り 利益を生み出すのに最適な基準で管理することが求められている。 言い換えればどこまでまずく作っても許されるかと言うこともできるのだ。 6-5 量産艇生産-輸送、保管(シュリンクラップ) 量産はディーラーショーで発表後の10月頃から開始されるがニューモデルが実際に 市場に出回るのは翌年の3月以降である。 それまでは生産したボートを作り溜めし一定期間保管する必要性がある。  舟艇の保管は小型とは言え乗用車に比べるとはるかに大きく自動車のように保管場所 あれば良いわけではなく保管場所の確保と簡単な船台が必要だ。 しかも前述のようにFRPは製造後およそ3ケ月樹脂が完全に固まっていないので保管 の仕方が悪いと船底が変形して思わぬトラブルが発生する。 メーカーが保管する場合は情報も管理されているが一旦工場から出荷されるとその 管理は難しい。 長期間の保管が予想される場合は日本ではボートカバーを使用するが外国ではシュリ ンクラップと称するプラスティクの皮膜で覆うのは前述のとおりである。