20m高速警備艇の企画と主要目 1. はじめに 企画は中国管轄の樹海で使用する高速警備艇で、香港管轄の高速警備艇と同等以 上の仕様とする。使用目的は税関、国境警備、警察用である。現在就航中の台湾 製アルミ構造の警備艇に対し量産を考慮したFRP構造を採用する。 2. 高速警備艇の主要目 現時点は企画の初期段階であり、今後詳細検討の結果で要目は変化することが予 想される。 全長Loa 20.00m 全幅Boa 5.00m 全幅BT 4.90m 全深Doa 2.46m 全高Hoa(キール下端から航海灯上端まで) 7.00m程度 全高Hdf(喫水線から航海灯上端まで) 6.00m程度 最大喫水(キール下端まで) 1.00m程度 定員 クルー 4名 旅客 50名 総トン数 トン 軽荷排水量 計画 35t程度 重荷排水量 計画 40t程度 推進機関(ディーゼル電気推進+バッテリー) 1500PSクラスx2 発電機 20KW 最大速力 計画 約46〜48kt 航海速力 計画 約30〜35kt 燃料タンク容量 6000リッター 清水タンク容量 1000リッター 航続時間(75% 出力) 約12時間 航続距離(75% 出力) 約770km 3. 高速船型 船型は波浪中で耐航性の良いV型船型を基本とし、船首付近は波切りの良いハイ チャインとする。船体のV角度は15〜20度とし、復元性は同級の警備艇と同等とす る。 4. 推進装置 4-1 主機 軽量大出力高速ディーゼル機関としてはMTU,MAN,CATAPILLAR,YANMARなど があるが中国での保守や価格の優位性などを考慮するとCATAPILLARの採用が優 位である。 CATAPILLAR C32 1552〜1652BHP/2300RPM、DRYWEIGHT 2631〜 2790kg 4-2 推進方式 40KT以上の最高速力での推進方式では通常のインボード方式、ウォータージェ ット方式、サーフェスドライブなどがあるがそれぞれ長所短所を持っているので どの型式を採用するかは使用者側と十分な協議が必要である。 ●インボード方式 要求されている最高速力は45KT以上の高速であり、通常のインボードシャフト ドライブ方式はシャフトブラケットやラダー等の付加物抵抗が大き過ぎるので 採用できない。30KT以下では推進効率が良い。 ●ウォータージェット方式 40KT以上では推進効率も良く、低速での加速性も良いが30KT以下の巡航速力 では推進効率が極端に悪く結果的に燃費も悪い。またジェット本体は高価格で ビニールシートなどを吸い込む可能性が高い。船底下にプロペラがないので ロープや網などを巻き込まないので取締艇には適している。 ● サーフェスドライブ方式(アーネソンドライブ他) アーネソンドライブは低速での加速や操縦性で優れたサーフェスドライブであ る。50KT以上の超高速領域ではウォータージェットより優れている。欠点は走 行中プロペラの半分は水面上にあるので水飛沫を高く上げ、又、プロペラシャ フト捩り振動が発生するので振動が大きくシャフトの耐久性に難点がある。 ●サーフェスドライブ方式(独自方式) アーネソンドライブと同様にサーフェスドライブ方式の長所と欠点を有してい る。サーフェスドライブの原理を活かし中国で独自に製作する方法もある。 プロペラ軸は固定式なので価格も安く製造できるがプロペラメーカーの協力が 必要である。 4-3 プロペラ推進効率比較 比較グラフは代表的なプロペラの最も推進効率の良い状態を推定しており特定の プロペラの効率を示している訳ではない。プロペラ単独効率はスーパーキャビ テーションプロペラが良いが高速ではシャフトブラケットなどの付加物抵抗が大 きいので全体の推進効率は落ちてしまう。アーネソンドライブは低速ではプロペ ラを全没させて推力を大きくし高速ではスーパーキャビテーションプロペラを サーフェスプロペラとして使用しているので全体の推進効率としては最も良い。 4-4 推進方式の優先順位 優先順位を付けるのは難しい。実用性を重視すればウォータージェット方式が 良いが高速性と価格を重視するなら独自方式のサーフェスドライブ方式が良い。 5. その後の検討 高速艇は重量重心が重要であり、設計段階から軽量化と最適重心位置をしっかり 管理し、製造工程でも重量管理は極めて重要である。 (速力に関しては更に高速力の要望があり下記の仕様で検討を進めた) 推進機関(ディーゼル) 1500PSクラスx3 試運転最大速力 計画 55kt以上 航海速力 計画 40kt以上