はじめに 企画から基本設計を進めるにあたって、まず市場調査としてプレジャーボートの雑 誌等から情報を収集した。今回の企画はインテリアを重視し、1/20サイズで室内模型 を製作したが検討する家具や艤装品が小さく、感性の部分をうまく表現できず、縮尺 は1/10が妥当であると判った。船内はシンプルなデザインで広く見せることが目的な ので、狭小空間を最大限に生かすことにした。シンプルデザインをうまく表現させる ために色調はホワイトやブラック、ブラウンを主に採用した。そして、床や壁、上部 構造物も統一感を持たせるカラーリングとした。昼間や夜の自由な時間をゆったりと 過ごせるような雰囲気のインテリアを重視しスペースの有効活用に留意した。(狭小 デザインの活用)本船の操縦はフライングブリッジ(F.B)とメインキャビン内で行な うので左右の重量バランスも重視して配置を行なった。メインサロンは簡単なパー ティーも可能とした機能的な配置と雰囲気作りに充分配慮した。 基本設計は、コンセプトとなる概念から始まりモデルデータの収集、主要目の検 討、一般配置、機関配置、居住区の検討を行ないながら定員、構造の検討やパーツリ スト、性能の検討も行なった。基本設計では重量重心、構造の検討は不可欠で重要で あるが、まずアルファ53(AL53)の重量重心データを流用して性能の検討を行った。 1級最大艇の現状 1-1市場 ヤマハ蒲郡製造が事業解散して以来、高品質プレジャーボートの製造可能な国内 のボートビルダーは無くなってしまった。ただアルミやFRPの業務艇を製造する ボートビルダーは多数存在するので、これらの会社が高い開発力と高品質の製造 技術が確立出来る可能性もある。 一方では、海外には魅力ある大型プレジャーボートは多数存在するので、ユー ザーが国産に拘らなければ希望するボートを購入できる選択肢は豊富にあると言 える。 コンセプトおよび留意点 ●量産ではないカスタムヨットとして開発する。 ●剛性の高いアルミの良さを生かしたモーターヨットとする。 ● 外観は独創的でリッチで品格のあるスタイルとする。 ● 輸入高級車で横付けできるプレステージをイメージ。 ●輸入艇を横にしてもひけを感じないボリュームと質感。 ●1?2家族で数日船内泊が可能。 ●簡単なパーティーも可能にする居住空間を持つ。 ●老人や女性の乗船に充分配慮する。 ●陸電装置、冷暖房設備、シャワー室、ギャレー等生活空間に充分に配慮する。 ●操船を容易にする為にバウスラスター、(アフトスラスター)を装備する。 開発の狙い 3-1国内有数のカスタム艇の製造。 3-2商品訴求点 十分な居住空間、静粛性、高級感、高い安定性、高速性能、安全性 3-3船体及び主要な上部構造はアルミ製とし、FRP型は一部の局面部分とライナーなど に限定する。但し、各種艤装で工数が低減出来る場合には簡易メス型によるFRP 成型部品も採用する。(例:化粧室、ギャレーユニット、運転席コンソール) 主要諸元 総トン数:20トンオーバー、小型船舶1級、沿海仕様 全長・全幅・完成重量:16m程度、4.7m、19t 主機関:エンジンはオーナー要求により検討するが、初期検討では1200PS/ 2300RPMクラスを2基とする。 最高速力: 38?40KT 製造数: カスタム艇として基本的に1隻、同型艇の製造可能性有り 乗船定員:クルー2名、乗客12名 航行区域:沿海 燃料タンク容量:4000リッター 清水タンク容量:500リッター 製造販売価格:2?2.5億円(主機や室内艤装の仕様による) 舟艇各部概要 パッケージ ・動感あふれるスタイリング ・耐航行性能を重視 ・室内配置に関しては顧客の要望を可能な限り反映する。(静粛なメインサロン 船内泊を十分に考慮、下層デッキにオーナーズルーム、ゲストルーム、クルー ルーム、ダウンギャレー エンジン ・ エンジンは軽量で高速艇用ディーゼルエンジン 船体構造 ・縦肋骨構造アルミハル構造 ・主要上部も高い剛性を持つアルミ構造。 ・FRP部品の適所配置による組立工数削減と型費低減。 ・アルミ製ハルデッキの表面仕上げ及び塗装はFRPと同等。 ・イージーメンテナンスのための室外からの開口エンジンハッチ。 ・ オプション艤装品の取付が容易な船体構造。 内装・艤装 ・ハンドレール・セイフティパッドの配置を熟慮したソフトインテリア。 ・使いやすさを追及した2レバー電子式リモコン。 ・家具類のユニット組付工法によるオーダーアコモデーションへの対応。 ・ 陸電設備はAC100V-50A。AC-DCコンバーターによる電源供給可。 性能目標 ・ ストレスを感じない加速性能。 ・ 自然な航走姿勢 旋回時ヒール角は15度程度。 ・ 微速トローリング装置の考慮。 ・ キャビン内は航走中に普通の声で会話ができること。バース内では波打ち音が 不快感なきこと。エンジン音が気にならないこと。 その他 ・法定安全備品の取り出しへの対応。 ・廃船リサイクルを考慮した組立構造。 検討課題 6-1原価見積 6-2開発大日程 6-3開発費用 6-4開発課題 6-5生産課題 6-6公的認証関係