はじめに 1980年後半はバブル全盛期でマリン業界も高額商品の需要が大きく海外からも豪華 クルーザーが多数輸入された。国産の豪華クルーザーはヤマハ発動機が事実上独占状 態であったが同一モデルが量産されるような市場ではなかった。当時のプレジャー ボート上限(総トン数20トン未満)を求める顧客の要望は様々で外観は同一でも主 機関をはじめ室内艤装は顧客の希望に応じられるカスタムボートが良いとの認識があ りそれに対応しようとしたのがアルファ53であった。 1級最大艇の現状 1-1市場 バブル全盛期は長年のマリンレジャー愛好者よりも、投機による高額所得者が競 うように高額なプレジャーボートを購入した時代だった。 高品質プレジャーボートの製造可能な国内のボートビルダーは少なかったが豊富 な資金が一部の造船所に流れて豪華なカスタムプレジャーボートを建造するよう になった。一方では、海外には魅力ある大型プレジャーボートは多数存在するの で、ユーザーが国産に拘らなければ希望するボートを購入できる選択肢は豊富に にあった。 コンセプトおよび留意点 ●量産ではないカスタムヨットとして開発する。 ● 外観は独創的でリッチで品格のあるスタイルとする。 ● 輸入高級車で横付けできるプレステージをイメージ。 ●輸入艇を横にしてもひけを感じないボリュームと質感。 ●1〜2家族で数日船内泊が可能。 ●簡単なパーティーも可能にする居住空間を持つ。 ●老人や女性の乗船に充分配慮する。 ●陸電装置、冷暖房設備、シャワー室、ギャレー等生活空間に充分に配慮する。 開発の狙い 3-1商品訴求点 十分な居住空間、静粛性、高級感、高い安定性、高速性能、安全性 3-2船体及び主要な上部構造はFRP製とし、各種艤装で工数が低減出来る場合には簡 易メス型によるFRP成型部品も採用する。(例:化粧室、ギャレーユニット、運 転席コンソール) 主要諸元(計画時) 総トン数:20トン未満、小型船舶1級免許艇、沿海仕様 全長: トランサムステップやバウスプリットを含んで15〜16m程度 全幅: 4.7m 完成重量:19〜20トン 満載排水量:23〜25トン 主機関:エンジンはオーナー要求により検討するが、750PS/2300RPMクラスを2基 最高速力: 35KT以上 製造数: カスタム艇として基本的に1隻、同型艇の製造可能性有り 乗船定員:クルー2名、乗客12名 航行区域:沿海 燃料タンク容量:3000リッタ 清水タンク容量:500リッター 製造販売価格:1.5〜2億円(主機や室内艤装の仕様による) 舟艇各部概要 パッケージ ・動感あふれるスタイリング ・耐航行性能を重視 ・室内配置に関しては顧客の要望を可能な限り反映する。(静粛なメインサロン 船内泊を十分に考慮、下層デッキにオーナーズルーム、ゲストルーム、クルー ルーム、ダウンギャレー エンジン ・ エンジンは軽量で高速艇用ディーゼルエンジン 船体構造 ・縦肋骨構造アルミハル構造 ・主要上部も高い剛性を持つアルミ構造。 ・FRP部品の適所配置による組立工数削減と型費低減。 ・アルミ製ハルデッキの表面仕上げ及び塗装はFRPと同等。 ・イージーメンテナンスのための室外からの開口エンジンハッチ。 ・ オプション艤装品の取付が容易な船体構造。 内装・艤装 ・ハンドレール・セイフティパッドの配置を熟慮したソフトインテリア。 ・使いやすさを追及した2レバー電子式リモコン。 ・家具類のユニット組付工法によるオーダーアコモデーションへの対応。 ・ 陸電設備はAC100V-50A。AC-DCコンバーターによる電源供給可。 性能目標 ・ ストレスを感じない加速性能。 ・ 自然な航走姿勢 旋回時ヒール角は15度程度。 ・ 微速トローリング装置の考慮。 ・ キャビン内は航走中に普通の声で会話ができること。バース内では波打ち音が 不快感なきこと。エンジン音が気にならないこと。 その他 ・法定安全備品の取り出しへの対応。 ・廃船リサイクルを考慮した組立構造。