研究調査レポート No.8
2011年5月5日

三陸地方を襲った大津波による鉄道の被災現場を見る

 

筆者は今年の311日に起きた大津波によって被災した三陸地方鉄道沿線各地を、交通事情が漸く復旧した4月30日から5月2日に掛けて調査してきた。新幹線に関わる被災状況はかなり詳しく伝えられているものの、ローカル線、特に、三陸沿岸の被災状況は必ずしも充分に伝えられていないと判断したからである。

調査区間は以下の通りである。

4月30日 仙石線仙台-東塩釜間
5月1日  山田線
5月2日  大船渡線 一関-気仙沼間及び気仙沼線 気仙沼-松岩間

筆者は過去に阪神淡路大地震の幾つかの被災直後の現場を見て、少なからぬ衝撃を受けた。しかし、今回は津波という全く次元の異なる自然災害によって、ここまで鉄道が破壊されるのかと大きな衝撃を受けた。さらに、津波に遭遇した車両が簡単に浮上して、流れることも初めて知った。

とくに大きな衝撃を受けた現場の写真をご紹介しよう。 


瓦礫に埋没した南気仙沼駅

写真は瓦礫の山に完全に埋没した南気仙沼駅を気仙沼方から見た写真である。当駅は海抜4mの町の中心にあり、昔は気仙沼港までの貨物線もあって賑わった駅でもある。現場には全く立入れず、瓦礫の中に僅かに跨線橋の屋根が出ていることから、ホームの位置が推定できる状態にある。

 

写真
1
瓦礫に埋没した南気仙沼駅を気仙沼方から見る 


海抜18mの浪板海岸駅を津波が襲う

山田線で比較的高所にある当駅までも津波が襲い、釜石方に隣接した浪板川橋梁は全て流失した。


 

写真
2
橋脚だけが残る浪板川橋梁と浪板海岸駅ホーム()の遠望

 

 津波と火災との双方で大きく被災した陸中山田駅

 山田線開通時は終点であった海抜4mの町中心に位置する当駅は、津波と火災との被害を受け、駅舎や陸橋は無残な姿をさらしている。



写真
3 火災の被害も受けた陸中山田駅を釜石方から見

 

津軽石駅停車中に津波で流されたディーゼル動車

山田線で唯一、被災した宮古行1647Dは写真の右に示す上り本線ホーム所定位置に停車中に、レール面から約2.8m 程度と推定される津波で後方の釜石方に流され、写真に示すように先頭車は「預け線」と「下り本線」とに跨がり、二両目は先頭が「下り本線」上に、後部は上り線から大きく山側にはずれて停止した。本車両は廃車にすると伝えられる。



写真
4 津軽石停車中に津波で浮上し、釜石方に流された宮古行列車を宮古方から見

  今回の現場で海抜の低い地域が被災するのは、ある程度は致し方がないにしても、海抜18mに位置する橋梁が完全に流失した事態から、この津波が如何に凄まじかったかを知ることができる。筆者は現地で被災された方々がお住まいの街と一体になった鉄道の復旧が一日も早いことを心から願っている。しかし、この状況も見れば、その道程は本当に容易ではない。国は津波防災に対する基本的な考え方を早急に示し、これを踏まえて、各自治体はハザードマップを早急に見直す必要がある。



トップページに戻る