竹 取 物 語
 
 
テンカラ竿の自作
 「竹竿」、今でこそ高価な贅沢品というイメージがあるが、私が子供のころには3m程の並継ぎの竹竿とテグスと浮きと釣り針をセットにしたものが子供の遊び道具として駄菓子屋で普通に売られていた。
 釣具屋の軒先には、何という種類か解らないが竹ののべ竿がたくさん立てかけられ売られており、地元の子供たちはこれを釣りではなくセミ捕りに利用していた。竹の先に「とりもち」を塗って高いところにいるセミの羽にペッタっとやるのだ。
 かくいう私も竹竿でセミを捕ったクチで、なんとツバメも捕ったことのある名人級の腕前を持っていた。
 このセミ捕りは小学校6年の夏まで続け、当時は釣りといえば近所でのハゼ釣りかルアーでのイダ(河口にいる巨大なウグイ)釣り、休日に父親に連れられてちょっと山間部に入ったところでハヤ釣りをする程度だった。
 中学校に進学した頃、なんとハヤ釣りの最中に従兄弟がアマゴを釣ってしまい、私親子と従兄弟親子でそろって渓流釣りにハマってしまった。
 最初はハヤ釣りの延長であるから当然餌釣りであるが、ある日、渓流での食いが悪くなった時間に本流に出て市販の流し毛針(カガシラ)でハヤを狙っていたところ、なんとまあ、アマゴを釣ってしまった。
 っとなると、次にテンカラに興味が進んでいくのは当然の流れである。
 しかし、テンカラ竿なんか私の住んでいる地域では手にはいるはずもなく、セミ捕りに使っていたのべ竿で自作する以外に方法は無かった。
 とりあえず、3本継ぎで3m程になるように切ってみたものの、継ぎ目をどうやって摺り合わせればいいのかも解らず、いろいろ考えたあげく、余った太い部分を使ってオービスのフェルールの様にブランクの外側にフェルールを被せるという方法で何とか竿として機能するものを作った。かくして何の飾りっ気もないなんとも不格好なテンカラ竿が出来上がったのだ。
 その年の内にこのテンカラ竿で何匹かのアマゴを釣ることができたが、夏のある日、父親がチョンカケ(鮎漁の一手法)用の短竿にちょうどいいっと、勝手に2番目を持っていって改造してしまい、テンカラ竿は事実上無くなってしまった。
 しかし父にとってその代償は高いものとなり、数年後にO社から「世紀毛針」が発売された時、自作竿の話を出して「世紀毛針」を買ってもらうことに成功したのを覚えている。
 
フライロッドビルディング
 高校を卒業する年の冬、東京の大学を受験しに行って、つるやでフィッシャーのグラファイト、マッキーズでスコットのグラスのブランクを買って帰り、残りの国立大学の受験勉強そっちのけでロッドビルディングに励んだ。
 そのおかげかどうか、東京の大学は落ちたが、地元の国立大学には見事合格を果たした。
 この2本の竿で県内の渓流を結構釣り歩いたものだ。
 その後も何本かビルディングしたが、何時も悩むのはガイド位置の決め方と、ラッピング〜コーティングであった。
 特にコーティングは何本作っても満足行く仕上げにはならなかった。
 
チシマザサとの出会い
 中国山地のある山中でチシマザサの大群落を見つけたことがある。
 当時はなんという竹かは解らなかったが、高さ2m程で、かなり肉厚で、振ってみると重量感はあるが粘りと反発力はすさまじいものを感じた。
 直感的に、「これはフライロッドの素材としてかなり使える部類に入る」と感じたが、殆どの竹が冬の積雪で先端部分が折れており、また、そこは国定公園の山中でもあり、動植物の採集が禁止されているところだったため、採って帰ることができず、結局未だにこの竹を使った竿は作っていない。
 機会があれば、自宅でチシマザサを栽培して竿になる竹を育ててみたいと思っている。
 
岐阜からの便り
 結局、丸竹での竿作りは最初のテンカラ竿以来やってなかったのだが、平成15年の正月に岐阜の友人から来た年賀状に「丸竹竿作りにはまっている」旨のコメントがかかれており、ふつふつとチシマザサの記憶が呼び起こされてた。
 チシマザサは無理としても、とりあえずそこらの竹で一本作ってみるかな〜。
 
竹を拾う
 よく釣りに行くダム湖畔で、新しいトイレを設置する工事が去年から行われていたのだが、そこに生えていた矢竹が結構な量伐採されており、今年の春、その中から竿に使えそうなものを数本ばかし拾って帰った。
 拾って帰ったは良いが、その後どうすればいいか解らない。
 とりあえず現地で皮と枝はむしりとってかえったものの、昔作ったテンカラ竿のような不格好なフェルールにはしたくないし、、、とりあえず、これらの竹はしかるべき時が来たときに使うとして、まずは練習用にもっと竹を集めよう。。。っということで、しばらくして再び同じ場所で追加の竹取を行った。
 しかし、刈り取った竹は何ヶ月も乾かさないと竿に使えないことを「丸竹倶楽部」およびそこの会員のサイトで知った。
 う〜んしばらくは作成に取りかかれんのかのぉ〜。
 
ハンズで竹を買う
 まあ、材料があっても工具がなけりゃあ工作はできないわけで、竹が乾くまでに工具をそろえなければならない。っということで職場の近くの東急ハンズへ行ったとき、なんと黒竹・虎竹が140円/本で売られているのを見つけて、バットに使えそうなものを2本ほど買って帰った。その後またハンズに行くと今度は丸節竹と思われる竹が110円/本で売られており、これまた即購入!
 とりあえず、これらで竿作りの練習を始めることにした。
 
布袋竹の穂先
 バットはいくらでもハンズで買えることが分かったのでいいとして、練習用のティップ材を確保しなければならない。
 再び竹藪へ行くが、伐採放置された中には使えそうなものは見つからなかった。
 っとある日、実家の軒下に、見覚えのある布袋竹の穂先が立てかけてあるのを見つけた。
 大昔に父が使っていた竹竿の穂先だろう。
 テンカラ竿の2番の代償として、こっそりといただくことにした。(おいおい、「世紀毛針」で片が付いたんじゃないんか)
 
いよいよ作成にとりかかる
 しかし、継ぎ竿である。継ぎ目をどう作ればいいのか皆目見当も付かない。
 とりあえずスプライスを試してみようと思ったが、斜めに真っ直ぐに切るにはそのための道具作りから始めなければならない。
 とりあえずもっと簡単で安易な方法で・・・っといろいろ試したが、最終的には並継ぎに落ち着いた。
 6mmのドリルでグリグリっと穴を広げて、、、パキッ!っと割れる。
 う〜ん、口糸を先に巻いておかなければならないようだ。
 次はグリップ・リールシートで悩んだ。
 ハンズの竹に市販品の高価なグリップやリールシートを使うのはいかに言ってももったいない。っということで集成コルクシートに接着剤を塗り、ぐるぐるっと巻き付けて完成!
 リールシートは20mm径のアルミパイプから切り出して適当に面取りしてこれまた完成!
 ガイドはさすがに作れる気がしないので、補修用に持っていたスネークガイドを使った。
 トップガイドとストリッピングガイドは釣具店で補修用に売られているものを購入した。
 ラッピングはお手の物!っと言いたいところだが、何本作ってもこのラッピングとコーティングだけは上手くできた試しがない。
 まあ、私のような素人がプロ並みに仕上げたら、金取って商売やってる方に申し訳ないので、素人並の仕上げってことで、良。
 
 そして#2のティップと#5のバットを持つ何ともアンバランスなフライロッド「又七淡毛針丸試壱号」が完成した。
 
 以前は渓流のほとりを車で走るときは川の方が気になっていたが、最近、竹藪が気になってしょうがない。
 
 かぐや姫は何処に〜!
 
 
20030519:up
 
 
釣りに行くメニューに戻る
又七の屋敷メインメニューへ戻る