PC-9801-92 SCSIボード(以降92ボードと記す)には、1GB以上の容量のディスクドライブをBIOSが正しく扱えないという問題があります。これを解消させるには、運用時にSCSI_RAMというIPLwareを使う手があり、既に広まっていると思います。しかしどうしても根本的にROMの内容そのものを書き換えて解消させたいという人もいらっしゃると思うので、今回本ツールを作成しました。
92ボードに載っているROMは書き換え不可能なものですが、27C1024というROMはこれとピン互換があることが確認されています。
まずROMライタの機能で92ボードのROMの全データを読み出しておきます。
PC-98で日本語 MS-DOS(バージョン2.11以上) を起動し、そのファイルをどこかのディレクトリ(なるべくカレントディレクトリ)に置いた状態で、本ツールをコマンドラインから実行します。引数はありません。
実行途中で入力ファイル名を尋ねられますので、いま持ってきたファイルの名前を
指定して下さい。次に、パッチがあたったファイルを作成しますので、そのファイル
名を指定してください。カレントディレクトリに無い場合はfull path名で指定して
ください。このとき1文字も入力せずにENTERキーを押した場合は、
入力ファイル名は 92BIOS1M.BIN
出力ファイル名は 92BIOS1M.rom
と仮定しますので、最初からこの名前で入力ファイルをカレントディレクトリに置いておくと簡単です。
実行中にいろいろ情報が表示されます。1から12までの丸囲み文字が4回現れ、PC-98から音が鳴るはずです。「終了しました」と表示されれば成功です。
実行後、作成された 128Kバイトの 92BIOS1M.rom をROMライタに読ませてから、 デバイスを27C1024にして新しいROMに書き込んでください。
その後ROMを92ボードに載せて、通常どおり運用してください。パッチ当てROMを 使用した場合でも、SCSI_RAMは併用可能です。BIOSでの動作は高速になります。
ROMを書き換えた92ボードの動作対象機は、CPUがi486以上に限定されます。CPUアクセラレータで486になっていればOKです。また本来動作対象でなかったPentium機やPCIバス搭載機で、動作可能となる可能性があります。
ROMデバイスは27C1024と互換性のあるものに限ります。適合しないものを選ぶとROMもライタも破損する可能性があります。ピン互換であれば5VのフラッシュROMでもOKですが、相当する品種は入手しにくいと思われます。
ROM容量が1Mbit以上有ればよいので、ピン互換の27C2048, 27C4096は使用できると思います。しかし92ボード側で上位のアドレスピンが正しくデコードされていない可能性があります。1Mbit(128KB)の内容と同じ物を繰り返し結合したファイルで書き込んでおくとよいかもしれません。
A-mate専用SCSI スロット向けのPC-9821A-E10のROMも本ツールでパッチをあてることは可能と考えられます。しかし2023年2月時点で、E10ボードのROMがどのようなものであるかが不明です。さらにピンのピッチが半分のROMは品種が限られます。消去窓の無いワンタイムかフラッシュでピン互換の物となるので、さらに対応の物は少ないでしょう。
なおH98-B12 SCSIボードのROMは構成内容が不明なうえ、NESAボードのROMは単純に書き換えただけではシステムが不正な物と判断してしまうため、本ツールの適用は全く期待できません。
ソースファイルは添付します。upgr92.sがそれです。Microsoft assembler 6.00 に対応書法で書かれています。ソースを流用してフリーの二次創作物を創ることは制限しません。
このプログラム upgr92はフリーソフトウェアとしますが、著作権は私にあります。upgr92.zip およびそれを展開したファイルは、転載不可とします。またパッチあて済みのROMだけを流通させるのはNECの著作権を侵害します。したがって、本ツールでパッチあてたROMおよびそれが載った92ボードを譲渡・販売することは禁止とします。
連絡先メールアドレスは、はこの文書をダウンロードしたWebサイトのトップページに記載されています。
2023-2-27 まりも