くるま

あっちゃんは家族の人と一緒に車で出かけるのが大好きです。
今日もお父さんの運転で、車で遠くまでお出かけです。

高速道路を走っていると、後ろからスポーツカーが猛スピードで走ってきました。
そして乗っている車にぴたっとくっつきました。車間距離はもうほとんどないぐらいです。
「ったく・・・・そんなに早く走りたきゃ、とっとと追いこしゃいいのに・・・・・」
お父さんが舌打ちをしながら、言います。
「本当よねえ。こんな走り方して・・・・でも、お父さんスピードあんまり上げちゃだめよ?」
お母さんも迷惑そうな顔をして言います。
そうしているうちにそのスポーツカーはさらにスピードを上げ、あっちゃんの乗っている車を追い越していきました。
スポーツカーはみるみるうちに見えなくなりました。
「あんな乱暴な乗り方して・・・・・きっとこの先で事故にあってるよ。多分」
あっちゃんが言いました。
「はははは・・・・・・罰があたるってか。そうだなあ、ああいう奴は一回思い知らないとだめだよなあ」
お父さんが笑いながら言いました。しばらく走っていると、渋滞でしょうか?前で車が止まっています。
「事故かな?」
車はゆっくり動きはじめます。そして・・・・・・
「あちゃ〜あんなに高い車、前がつぶれてるよ・・・・廃車確定だな」
そうです。そこには一台の車が逆方向を向いて止まっていました。前の部分がほとんどつぶれています。
横には運転していたのでしょうか、男の人が一人、立っています。なにやら携帯電話で話しています。
「お父さん・・・・あれ・・・・・さっき追い越していった車じゃないの?」
お母さんが聞きました。
「あ、多分そうだ。あっちゃんの言ったことが本当になっちゃったねえ」
お父さんはあっちゃんを見て言いました。
「うん。そうみたいだね。お父さんも絶対にあんなに飛ばしちゃだめだよ?」
にっこり笑いながら言いました。
「?、ああ。お父さんはそんなに飛ばさないから大丈夫だよ」
お父さんは笑いながら言いました。

それから何日経ったのでしょうか。
また車で家族で遠出することになりました。
普通の道路を走っていると、この前と同じように後ろから猛スピードで追い抜いていく車がありました。
「まったくあぶねえなあ。最近は本当に乱暴な乗り方する奴ばっかりだ・・・・・」
「本当にそうよねえ」
お父さんと、お母さんが話してました。
そんなとき、あっちゃんが一言。
「この先のカーブで道路から落ちてたりして」
笑いながら言いました。
「おいおい、この前の話か?縁起の悪いこという・・・・な・・・・あ?」
お父さんが話していると、車はカーブに差し掛かりました。そこには。
ガードレールを突き破り、道路から下の田んぼに落ちている車がありました。よく見るとついさっき追い越していった車のようです。
「ねっ?だから、お父さんも気をつけないとね?」
あっちゃんがにっこり笑いながら言いました。
「は・・・・・はは・・・・・・そうだなあ」
お父さんは力なく笑いました。

さらに何日か経ったある日。
あっちゃんの家に電話がかかってきました。
「はい・・・・・え?主人が?そうですか・・・・・で、怪我のほうは?、そうですか。わかりました。○○中央総合病院ですね?わかりました
すぐに向かいます」
「あっちゃん。今から病院に行くよ。お父さん交通事故で怪我しちゃったみたいなの」
「うん、わかった」
あっちゃんのお父さんは、機械を直す仕事をしています。会社の車であちこち行くのですが、どうやら事故を起こしてしまったようです。
足の骨ととあばら骨の2〜3本折ったようですが、どうやら無事のようです。
病院に到着すると、二人はお父さんの病室へと向かいます。
「もう〜どうしちゃったの?普段から事故には気をつけてるお父さんが・・・・」
心配そうな顔でお母さんが言いました。
「心配かけてごめんな?今日、仕事が忙しくて・・・・急いでたら電柱にぶつかっちゃった」
申し訳なさそうにお父さんが言いました。
「まあ、無事でよかったわ。じゃあ、あたし一旦家に戻って、着替えとかもってくるから。あっちゃんはどうするの?お母さんまた来るけど?」
お母さんがあっちゃんに尋ねます。
「あたしここで待ってる」
あっちゃんは答えました
「わかった。じゃあお母さん戻ってくるから、おとなしく待ってるのよ」
「は〜い」
そう言うとお母さんは病室から出て行きました。
「本当にすまないな。心配かけちゃって・・・・」
お父さんが再び申し訳なさそうに言いました。
「・・・・・・だから言ったのに・・・・・・・・」
あっちゃんが下を向きながら言いました
「?え?」
お父さんが言いました。
「・・・・・・『あんな』カーブであんなにスピードを出しちゃって・・・・・・・・・・・」
あっちゃんがうつむきながら言いました。
「お・・・・・お、おい、驚かせるなよ」
お父さんがうろたえています。あっちゃんを見ると、さっきからうつむいたままです。さらによく見ると口元が笑っているかのように見えます。
「もうちょっとスピードを出していたら、お父さん、死んでたよ?」
そういうと、あっちゃんが顔を上げました。あったちゃんの顔を見たとたん、お父さんの顔色がみるみる青白くなります。
「・・・・・・・・・・・・・・・・!?」
その顔にはうっすらと不気味な、そして凍った笑みを浮かんでいます。そして、目の色が今まで見たこともない綺麗な色で光っています。
「お・・・・おい・・・・・?なんでそんなことを・・・・あ、お父さんを驚かせようって訳だな〜?」
お父さんがひきつった笑い顔で言いました。
「な〜んてね?今度は飛ばしすぎないようにね?」
あっちゃんがおどけた顔で言いました。いつも見慣れた顔です。
二人が話をしていると、お母さんが戻ってきました。
「はい。着替えと、洗面セットとそれから・・・・・・・・・・」
お母さんがいろいろ準備をしました。そして。
「悪いんだけど・・・・今日のところは一旦家に戻るわ・・・・明日の朝ごはんとかあるから・・・・」
申し訳なさそうにお母さんが言いました。
「解った。本当に申し訳ない」
お父さんが言いました。
「ううん。気にしないで。じゃ、また明日来るから。あっちゃん?帰るわよ?」
「うん。じゃ、お父さん。またね〜」
二人は病室を後にしました。
「あ、お母さん、ちょっと待ってて?」
廊下からあっちゃんの声が聞こえます。
そして、あっちゃんが一人病室へと小走りに戻ってきます。
「お・・・・おい・・・・・病院の中は走っちゃだめだぞ・・・・・?」
と、お父さんが言うと、あっちゃんは自分の顔をぐいっといきなりお父さんの顔に近づけてきました。
「おい・・・何のまね・・・・・!?」
そして、お父さんの手にあるものを握らせました。
「くすくすくす・・・・・・・もう無理なんて絶対しないでね?・・・・・・言うこと聞かないとこんどこそ・・・・くすくす・・・」
顔を見ると、さっきの不気味な顔になっていました。
「あっちゃ〜ん。ほら〜、帰るよ〜」
お母さんが心配になって病室に戻ってきました。
「あ、お父さん、またね〜?」
普段の顔に戻ったあっちゃんが小走りに病室を後にします。
「こらっ!!病院の中は走らないの!!」
「ごめんなさ〜い」
二人の話し声が段々遠ざかっていきました。
「なんなんだ・・・・さっきのは・・・・・」
お父さんが呆然としていると、手のひらにあるものが握られているのを気がつきます。その手の中のものを見た瞬間。
背筋が凍りつきます。
「!!!?・・・・・・・・・・・・・・・こ・・・・・・これが何で・・・・・・・・」
手のひらにあったもの。それはお守りでした。でも
「これ・・・・会社の車に置いてきたのに・・・・・・・でも、何であいつが!?」
そうです。事故を起こした車の中にあったものがなぜかあっちゃんが持っていたのです。
「くすくすくすくす・・・・・・・・・・・・・・・」
あっちゃんのあのときの笑い声がよみがえってきました。
お父さんは、お守りの中をあけてみました。
そこには、紙小さな紙が2枚入っていました。
「あ、あれ?この前見たときは1枚しかなかったのに・・・・・・」
その紙にはこう書かれてありました。
1枚にはこうつうあんぜん、と
もう一枚を見たとき、再びお父さんの背筋が凍りつきます。
「!!!?・・・・・何で・・・・・!?これ、明日の新聞!?」
それは・・・・・
「○○市××町にて交通事故・・・・」
今回の事故を知らせる新聞の小さな切抜きでした。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
あまりの突然で不思議な出来事に言葉が出ませんでした。


病院の近くのバス停。
あっちゃんとお母さんがバスを待っていました。
「もう・・・・本当に気をつけてもらわなきゃ・・・・」
ため息混じりにお母さんがいいました。それを聞いたあっちゃんが、
「多分、大丈ぶだよ。さっキオトウサンニケイコクシタカラ・・・」
そう言うとあっちゃんはお父さんのいる病室を見ながら
「くすくす・・・・・・・・」
と笑いました。

おわり


戻ります?