BERNARDO SASSETTI
多分に叙情的ではある
"NOCTURNO"
BERNARDO SASSETTI(p), CARLOS BARRETTO(b), ALEXANDRE FRAZAO(ds)
2002年7月 スタジオ録音 (CLEAN FEED : CF008CD)

スペイン・バルセロナで活躍する若手ピアニスト、BERNARDO SASSETTIの2002年録音のアルバム。スペインというと、2007年のピアノ・アルバム・ベスト3の1枚に選んだINAKI SANDOVALの"SAUSOLITO"(JAZZ批評 401.)や2005年の年間推薦盤として選んだMARTI VENTURAの"PAS DEL TEMPS"(JAZZ批評 287.)を思い浮かべる。まだある、IGNASI TERRAZAの"IT'S COMING"(JAZZ批評 192.)も星5つだった。
というように、スペインのジャズとはすこぶる相性が良い。世間でよく言われていることだけど、スペイン語は日本人に馴染み易いというのと共通項があるかもしれない。

@"TIME FOR LOVE" 
マレットを使用したドラミングが異国情緒を醸し出す。SASSETTIのピアノは音数少なめ。じっくりと聞かせるタイプで「間」を持っている。マレットからブラッシュに切り替わり、ピアノがユニークなフレーズを奏でる。名づけて「星屑奏法」。きらきら輝く夜空の星のごとくピアノの音が散らばる。
A"SONHO DOS OUTROS" 
クラシカルなマイナー調のテーマ。ピアノ・ソロ。
B"REFLEXOS" 
Aから連続して3曲目に入る。中盤に長めのベース・ソロが用意されている。このベーシスト、なかなかグルーヴ感を持ったテクニシャンでもある。終盤は3者のフリーなインプロビゼーションになって終わる。長めの9分強。
C"NOCTURNO" 
夜想曲と言うに相応しいテーマ。多分に叙情的ではある。
D"OLHAR" 
中東的な異国情緒があるテーマ。

E"MUSICA CALLADA MOV.1" 
少々重苦しいベースのアルコで始まる。このCARLOS BARRETTOのアルコ奏法は正確で上手い。スローというよりもほとんどフリーのテンポで演奏されるインタープレイ。思索的というか観念的というか・・・。
F"CANCON NO.7 ANDANTE" 
美しいスローのピアノ・ソロで幕を開ける。次にドラム・ソロが入り、4分経ったあたりからテーマに入る。これもリリカルな演奏だ。
G"MONKAIS" 
一転してグルーヴィなテーマ。だが、32小節の歌モノだ。「へえー!こんな演奏もするだ!」と思うくらい今までと趣が違う。この曲はこのアルバムのアクセントになっている。
H"QUANDO VOLTA O ENCANTO" 
元に戻ってしっとりとした曲想。ここでもお得意の星屑奏法が聞ける。
I"MUSICA CALLADA MOV.1" 
Eのピアノ・ソロ・バージョン。

全体的な印象としては叙情的、内省的な印象が強い。躍動感みたいなものを期待していると裏切られる。そういう中にあってGの"MONKAIS"はイメージを180度変えた演奏で面白い。   (2007.12.24)



独断的JAZZ批評 454.