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『シコふんじゃった。』['91]
『がんばっていきまっしょい』['98]
監督・脚本 周防正行
監督 磯村一路

 共に部活としてはマイナー競技の大学相撲部と高校ボート部のカップリングが今回の“青春プレイバック”の課題作だった。

 先に観た『シコふんじゃった。』は、公開時に『夜逃げ屋本舗』との二本立てで観て以来の再見だったが、当時はもっと面白く観た気がする。つまらないわけではないけれども、あら?こんなもんだっけ?という感じだった。マイベストテンに選出していた映画でもあり、非常に面白かったという記憶が邪魔をした側面があるのかもしれない。穴山教授(柄本明)が青木富夫(竹中直人)を労って四年間ご苦労様でしたと言ったのを「いや八年間だろ」と思ったことを思い出した。山本秋平を演じた本木雅弘の腰を低く割った構えが、なかなか決まっていたように思う。


 続いて観た『がんばっていきまっしょい』は、二十六年ぶりの再見。小学時分はいじめられっ子で小さな声しか出せなかったのに、部活一年余りで大声を張り上げる立派なコックスになっていたヒメ(清水真実)が好かった。1976年春が高校入学の共通一次試験一期生世代となれば、そのとき大学進学した僕とは三年違いになる。鍋焼きうどんが350円だった。篠村悦子(田中麗奈)にバドミントンにはエエ男がおらんきねぇと薦めていた京大生の姉を演じていた松尾れい子が目を惹いた。

 オープニングの廃屋と化していたボート部の倉庫兼部室が製作時ということなら、1976年は二十二年も前の話となるわけだが、それに相応しい傷みようだった美術【磯田典宏】の丹念さと画面の美しさ【撮影:長田勇市】に感心した。本作が青春期を描いた美しい作品として印象深く残っているのは、そのストーリーよりも美術と撮影によるところが大きいのではないかという気がしている。オギヨディオラもしみじみ好かった。

 部活ものに付き物の合宿場面があるのだが、両作ともそれがとてもよくて合宿それ自体ということではなく、学校時分に精出して取り組んだ何かがあることの幸いに思いを致したのも、折よく母校訪問をして生徒会活動に取り組んでいた時分の話をして関心を寄せてもらったことを切っ掛けに在校時の校内新聞を読み返して覚えた感慨を記事にして土佐校新聞部OB会サイトに掲載したばかりだったことが作用したのかもしれない。


 男ばかり四人が集まった合評会では思い掛けなくも、全員が『がんばっていきまっしょい』のほうに支持票を投じることとなった。僕と同様に、『シコふんじゃった。』は、以前に観た時とまるで違うように映り、全く楽しめなかった。その一方で『がんばっていきまっしょい』は、何度観ても心地よい気分にさせられた。田中麗奈も良かったけれど、コーチ役の中嶋朋子が大人の演技で印象深かった。といった意見が出ていたが、他のメンバーも似たような思いを抱いて驚いたことだろう。

 なかでも竹中直人に対する散々な意見があったので、僕も役者としての彼は暑苦しいので好みではないものの本作では、体の動きや表情など実写で漫画のようなキャラクターを体現していて感心させられたと言うと、課題作をカップリングした主宰者が賛同してくれた。とはいえ、総じて本作の登場人物は相手校や先輩OBも含めて相撲部員全員のキャラクター造形に少々難があって折角のギャグネタの面白さを却って減じているように今回は感じられたと述べたことへの賛同は、余りなかったように思う。

 他方で、『がんばっていきまっしょい』で凝った造りで目を惹いた廃屋化した部室兼倉庫の場面がアバンタイトルでしか現れなかったことに驚いたことと併せて、どちらのシーンを先に撮ったのだろうと投げ掛けたことに興味を示してくれたメンバーが、映画のラストにはオープニングと同じ現在の情況も、五人のその後も描かれていないところがいいのだと言っていたことには賛意を覚えた。ドラマチックに描かれたスポ根ものでもガンバリズムでも達成物語でもなく、その要素を秘めながらも抑制しているところが抜群で何とも言えない静かな余韻を残しているのが好いのだそうだ。正にそれを醸し出していたのが、ストーリーよりも美術と撮影に丹精を掛けた映画づくりだったように僕は思っている。そして、アバンタイトルにしか廃屋を登場させていないからこそ、二十余年前が主役になると同時に、それがもはや廃れてしまっていることを印象づけていたのかもしれないと思ったりした。
by ヤマ

'26. 7. 4. BSプレミアムシネマ録画
'26. 7. 7. BSプレミアムシネマ録画



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