美濃びとに |
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1 うた
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よいにほひでの、 さいたばかしのはなのやうでの、 しなのたかい、いきづかひでの、 それはさびしいたましひのほほゑみでの、 さうありたいとおもふがの、 みなさまどうぢやの。 |
2 秋
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鴫が立つ、 ただそれのみの秋でおりやるよ。 おりやるよ、のう、 そこな坊さま、 いそがしやれよと、風も通つた。 |
3 閑か
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あるかないかのそよ風に、 ほうつほうつと楊(やなぎ)の絮(わた)が飛ぶわいの、 かはせみの巣のあたりまで往たわいの、 かはせみは居らなんだよ、 ただ、いたちが疱瘡で寝てゐた。 |
4 美濃びとに
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霜が濃いぞ、鶫よ。 |
5 雀をどり
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どうせ、しがない雀ぢやとても、よ、 せめて歌はにやこの日が経たぬ。 ありやせ、こりやせ、 ありや、りやん、りやん、りやん、りやん。 せめて歌うたら日は経たうけれど 一羽一羽ぢや寂しうてならぬよ、 連れ衆よびたや、誰か友ほしや。 ありやせ、こりやせ、 ありや、りやん、りやん、りやん、りやん。 せめて二羽なら慰みませうが、 馴れてしまへば夫婦もいややよ、 寂し、うるさし、辛なるばかし。 ありやせ、こりやせ、 ありや、りやん、りやん、りやん、りやん。 寂し寂しで世はわたられず、え、 頭まろめて澄ましてゐよと、え、 空ぢや寒風、また、笹の雨。 ありやせ、こりやせ、 ありや、りやん、りやん、りやん、りやん。 どちら向いても笹藪ばかり、 空は高いし、地面は暗し、よ、 昔や遠いし、足腰やたたず。 ありやせ、こりやせ、 ありや、りやん、りやん、りやん、りやん。 命や短し、どうなるものぞ、え、 ままよ踊らにやこの日が経たぬ、 さあさ、踊りませう、雀のをどり。 ありやせ、こりやせ、 ありや、りやん、りやん、りやん、りやん。 |
歌詞は少し異なるようですが、「第二海豹と雲《が出典とおぼしき最初の4曲は青空文庫にある白秋オリジナルの詩を転記しました。最後の曲だけ出典がまだ突き止められておりませんので関定子さんのCDのライナーにあるものを転記させて頂いております、この詩には中山晋平も曲をつけていたりするようです。
( 2017.11.12 藤井宏行 )