ねんねのうた |
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こぬか雨
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ねこやなぎ、 こぬかの小雨がかかります。 こんこん小雨の こぬか雨、 こんこんこまかにおしめりか。 こんこん小雨の ねこやなぎ、 ねんねの寝た間におしめりか。 こんこん小雨の こぬか雨、 明日は董も咲いてましよ。 こんこん小雨の ねこやなぎ、 ねんねもすやすややすみます。 |
げんげ草
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ぽちぽち、仔牛も遊んでる。 牧場の牧場のげんげ草、 誰だか遠くで呼んでゐる。 ねんねのお里はよい田舎、 ねんねのお汽車で下りたなら、 道はひとすぢ、田圃道、 藁屋に緋桃も咲いてます。 ねんねのお守はゐやせぬか、 ちよろ/\小川もながれてる、 いつだか見たよな橋もある、 小藪のかげには閻魔堂。 ねんねのお里で泣かされて、 お背戸に出て見たげんげ草、 あのあの紅いげんげ草、 誰だか遠くで呼んでゐる。 |
北原白秋の第四童謡詩集「祭の笛」 その最初のセクションである「ねんねのうた」には全部で11篇の詩がありますが、その中から2篇を選んでつけられた歌です。この「ねんねのうた」には他にも草川信のメロディで大変に有名な「揺籠のうた」があります。
耕筰のつけた2曲はたいへんシンプルなもので、あまり特徴が感じられないのですが、この白秋の童謡詩集の中でも素朴でリズミカルでユーモラスな「祭の笛」から耕筰が歌を書いた数少ない作品ということで注目して置く価値はあるでしょうか。
( 2015.10.13 藤井宏行 )