To Julia Op.8 |
ジュリアに |
1 The bracelet
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1 腕輪
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Julia,this my silken twist; For what other reason is't, But to show thee how,in part, Thou my pretty captive art? But thy bondslave is my heart; 'Tis but silk that bindeth thee, Knap the thread and thou art free: But 'tis otherwise with me; I am bound,and fast bound,so That from thee I cannot go; If I could,I would not so. |
ジュリアよ この絹の撚り糸を その理由は他にはあり得ない ただあなたに教えてあげたいだけなのだ それなりに あなたが私の可愛い囚人であるということをね? だが あなたに縛られた奴隷は私の心の方だ ただの絹糸なのだ あなたを縛っているのは その糸を断ち切れば あなたは自由の身: けれど 私の場合はそうではない 私は縛られている とてもきつく縛られているので あなたから逃げ出すことはできないのだ もしできたとしても 私はそうしないだろうけれど |
2 The maiden blush
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2 はにかむ乙女
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Paints them with fresh vermilion: So cherries blush,and Kathern pears, And apricocks in youthful years; So corals look more lovely red, And rubies lately polished: So purest diaper doth shine, Stain'd by the beams of claret wine: As Julia looks when she doth dress Her either cheek with bashfulness. |
爽やかな赤に染めている朝ごとの 色づいたサクランボや カスリーン梨や そしてアプリコットがまだ若やいだ時にあるのように 珊瑚が一層愛らしく赤く見え そして磨いたばかりのルビーがそう見えるように 純白のナプキンが輝くように 澄んだワインの光に照らされて そんなふうに見えるのだ 彼女が その両方の頬を恥じらいで火照らせる時には |
3 To Daisies
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3 デイジーに
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Has not as yet begun To make a seizure on the light, Or to seal up the sun. No marigolds yet closed are; No shadows great appear; Nor doth the early shepherds' star Shine like a spangle here. Stay but till my Julia close Her life-begetting eye, And let the whole world then dispose Itself to live or die. |
まだ始めてはいないのだ 光を捕まえることも 太陽を封印することも マリーゴールドもまだ閉じていないし 影は大きく広がってはいない 一番に現れる羊飼いの星も 光飾りのようにまだ輝いてはいないのだ そのままでいてくれ ジュリアが閉じるまで その生気に満ちた目を そしたら全世界は好きに振る舞うがいい 生きるなり 死ぬなり |
4 The Night Piece
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4 夜の曲
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The shooting stars attend thee; And the elves also, Whose little eyes glow Like the sparks of fire,befriend thee. No Will-o'th'-Wisp mislight thee; Nor snake,or slow-worm bite thee: But on,on thy way Not making a stay, Since ghost there's none to affright thee. Let not the dark thee cumber: What though the moon does slumber? The stars of the night Will lend thee their light, Like tapers clear without number. Then Julia let me woo thee, Thus,thus to come unto me; And when I shall meet Thy silv'ry feet, My soul I'll pour into thee. |
流れ星たちはあなたのお供をする エルフたちもまた その小さな目を輝かせながら まるで炎のきらめきのように あなたの道案内をするんだ 鬼火があなたに道を間違わせることはないし ヘビやトカゲがあなたを咬むことはない だからどんどん どんどん歩いて 決して立ち止まらないで あなたをおどかすお化けなどいやしないんだから 暗闇にあなたの邪魔はさせない お月様が眠っていてもそれが何だい? 夜の星たちが その光で導いてくれるんだから まるで無数のロウソクの灯りのように だからジュリア あなたに愛を告げたいのだから 私のところに会いに来てくれ もしも会うことができたなら あなたの銀色の足に この魂のありったけを私はあなたに注ごう |
5 Julia's hair
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5 ジュリアの髪
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And spangled too, Like leaves that laden are With trembling dew: Or glittered to my sight, As when the beams Have their reflected light Danc'd by the streams. |
そしてきらきら光っていた まるでそれは草の葉みたいだった 震える露を乗せている葉の あるいは私の目の前で光って見えるのは まるで日差しが その光を反射させて 小川の上で踊っているかのようだった |
6 Cherry ripe
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6 熟れたサクランボ
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Full and fair ones; come and buy. If so be you ask me where They do grow,I answer: There, Where my Julia's lips do smile; There's the land,or cherry-isle, Whose plantations fully show All the year where cherries grow. |
まんまるできれい さあ買っとくれ! もしもお尋ねになるならば 一体どこに それはなってるのかって お答えしますよ:これはね おいらのジュリアの唇がほほ笑むところ そこで取れたんだ サクランボ島だよ そこの畑では見れるんだ 一年中サクランボがなっているのが |
17世紀のイギリスの詩人へリックは結構な数の愛の詩を書いています。そこに描写された相手の吊はジュリア、ダイアニー、エレクトラetc.といろいろですが、どうも実在の人物ではなく詩人の描き出した架空の女性たちのようです。その中ではこのジュリアに語りかけている詩が私の知る限りでは最も多いように思われ、また印象に残りしゃれた作品も多いように思われます。
そんなジュリアに寄せた愛の詩の中からクィルターは6篇を選び出し、この歌曲集を書きました。遠回しな愛の告白から彼女の愛らしさを無邪気に讃える歌まで多彩に選んでいます。
Naxosにある歌曲集でアンソニー・ロルフ=ジョンソンが歌っているものではピアノの他に弦楽4重奏の伴奏もついてなかなかに雰囲気十分です。
( 2014.11.21 藤井宏行 )