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女声合唱と筝のための「秋来ぬと」  


詩: 梁塵秘抄 (Ryoujin−Hisyou,12世紀-) 日本

曲: 柴田南雄 (Shibata Minao,1916-1996) 日本 日本語


1 そよ 秋来ぬと


そよ 秋来ぬと
目にはさやかに 見えねども
風の音にぞ おどろかれぬる


2 梁塵秘抄と名づくる事


梁塵秘抄と名づくる事 虞公(ぐこう)・韓娥(かんが)といひけり 声よく妙にして他人の声及ばざりけり 聞く者愛で感じて 涙おさへぬばかり也(なり) 歌ひける声のひゞきに、梁(うつばり)の塵(ちり)たちて 三日ゐざりければ、梁の塵の秘抄とはいふなるべしと


3 山伏の


山伏の
腰につけたる法螺貝の
ちゃうと落ち ていとわれ
砕けてものを思ふころかな


4 君が愛せし


君が愛せし 綾藺笠
落ちにけり落ちにけり
加茂川に 川中に
それを求むと尋ぬとせしほどに
明けにけり 明けにけり
さらさらさいけの秋の夜は


5 ゐよゐよ 蜻蛉よ


ゐよゐよ 蜻蛉(とうばう)よ
堅塩参らむ
さてゐたれ 働かで
簾篠の先に
馬の尾縒り合はせて
かい付けて
童 冠者ばらに繰らせて
遊ばせん


6 われを頼めて


我を頼めて来ぬ男
角三つ生ひたる鬼になれ
さて 人に疎まれよ
霜 雪 霰降る水田の鳥となれ
さて 足冷たかれ
池の浮き草となりねかし
と揺り かう揺り 揺られ歩け


7 そよ 津の国の


そよ 津の国の
長柄の橋も 尽くるなり
今はわが身を 何にたとへん



( 2021.04.26 藤井宏行 )