TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Lose Ware   Op.62-10  
  Das Holdes Bescheiden
不良品  
     歌曲集「善き慎み」

詩: メーリケ (Eduard Friedrich Mörike,1804-1875) ドイツ
    Gedichte  Lose Ware

曲: シェック (Othmar Schoeck,1886-1957) スイス   歌詞言語: ドイツ語


”Tinte! Tinte,wer braucht? Schön schwarze Tinte verkauf' ich!”
Rief ein Büblein gar hell Straßen hinauf und hinab.
Lachend traf sein feuriger Blick mich im Fenster,
Eh' ich mich's irgend versah,huscht er ins Zimmer herein.
”Knabe,dich rief niemand!” - ”Herr,meine Ware versucht nur!”
Und sein Fäßchen behend schwang er vom Rücken herum.
Da verschob sich das halbzerissene Jäckchen ein wenig
An der Schulter und hell schimmert ein Flügel hervor.

”Ei,laß sehen,mein Sohn,du führst auch Federn im Handel?
Amor,verkleideter Schelm! soll ich dich rupfen sogleich?”
Und er lächelt,entlarvt,und legt auf die Lippen den Finger:
”Stille! sie sind nicht verzollt - stört die Geschäfte mir nicht!
Gebt das Gefäß,ich füll' es umsonst,und bleiben wir Freunde!”
Dies gesagt und getan,schlüpft er zur Türe hinaus. -
Angeführt hat mich doch: denn will ich was Nützliches schreiben,
Gleich wird ein Liebesbrief,gleich ein Erotikon draus.

「インク! インク! インクはいらんかね? 綺麗な黒インクの大売出しだよ!」
  悪童が大声で叫びながら通りを行ったり来たり
 彼が燃える眼差しの笑顔でふと窓の私を見上げたかと思うと
  あっと言う間に部屋の中に駆け込んできた
「坊主、誰も君を呼んでないぞ!」-「旦那、おいらの品物を試してみてよ!」
  そして背中の辺りからすばやくインクの壜を取り出した
 すると彼のボロの上着の肩の辺りが少し開いて
  奥の方に明るく光る翼がちらりと見えた。

「おい、何だいそれは、この餓鬼が、その翼も商品なのか?
  変装した悪戯者のアモルめ! 今すぐ羽をむしってやろうか?」
 すると彼は微笑み正体現し唇に指をあてた:
  「お静かに! これは脱税品なんですから・・・商売の邪魔しないでくださいよ!
 インク壺をただで満杯にしてあげます、だから僕らはずっと友だちですよ!」
  こう言ってインクを満たすと、するりと戸口へ抜けていった・・・
 だがやっぱりあいつに騙されたんだ:これで何かちゃんと書こうとすると
  みんな恋文か恋愛詩になっちまうんだから

※アモル:愛の神=キューピッドのラテン語名

 物売りの子供に変装したキューピッドが、書くと何でも愛の言葉になってしまうインクを売り歩いているという面白い詩。キューピッドは現在では幼児の姿で知られていますが、古くは美青年・美少年の姿で絵に描かれていました。この情景ではもちろん少年でしょう。
 シェックの曲は、冒頭の景気のいい呼び声が印象的。キューピッドの羽の動きを示唆するかのようなピアノの細かい音符がユーモラスに続きます。演奏は2つの全集のフィッシャー=ディースカウとボストリッジ共に優れています。

( 2005.02.05 甲斐貴也 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ