Zum neuen Jahr〜Kirchengesang (Melodie aus Axur: >>Wie dort auf den Auen<<) |
「新年に」〜聖歌(「アクスール」の『沃野の向こうで』の旋律) |
Wie heimlicher Weise Ein Engelein leise Mit rosigen Füßen Die Erde betritt, So nahte der Morgen. Jauchzt ihm,ihr Frommen, Ein heilig Willkommen, Ein heilig Willkommen! Herz,jauchze du mit! In Ihm sei’s begonnen, Der Monde und Sonnen An blauen Gezelten Des Himmels bewegt. Du,Vater,du rate! Lenke du und wende! Herr,dir in die Hände Sei Anfang und Ende, Sei alles gelegt! |
しずかにそっと ひとりの天使が ばら色の足で 地上に足を踏みいれる そうしてその朝がやってくる 敬虔に ともに喜ぼう 聖なる日を迎えることを 聖なる日を迎えることを! 心よ お前もともに喜ぼう! 青い空に孤を描く 月と太陽の運行が 今朝新たに 始まるのだ あなたよ 父よ、教えて下さい そしてよりよく導いてください! 主よ あなたの手の中に 初めと終わりが、 全てのものがありますことを! |
サリエリによるメーリケ歌曲があるのかと驚かれたでしょうが、これはサリエリの代表作である歌劇『オルムズの王アクスール”Axur,re d'Ormus”』のアリア「沃野の向こうで」の旋律にメーリケが詩をつけた作品です。サリエリの名を一躍有名にした映画『アマデウス』でサリエリが自作の歌劇を指揮するシーンがありましたが、それがまさにこの歌劇です。森孝明氏の「メーリケ詩集」(三修社)の註によれば、メーリケはこの作品の1828年シュトゥッツガルトでの上演を観劇しているそうです。
一般にヴォルフの作曲によって知られる詩ですが、元々が歌詞であることはあまり知られていないでしょう。しかも演奏できる楽譜の形になって残されていることはわたしも最近まで全く知りませんでした。音楽の素養があったというメーリケの兄カールKarl Mörike(1797-1848)によって編曲されたそれはCDで実際に聴くことが出来ます。
Gundula Schneider(Ms),Markus Hadulla(p)
”Nachtigallensang”:Eduard Mörike in Vertonungen seiner Zeit (BR 140 004)
保守的な作品ながら当時の有力な作曲家の作だけあって楽しく聴ける美しい曲です。鬼才歌曲作家ヴォルフの作曲を通してでなく、メーリケ自身の音楽観とその詩の音楽性を知ることが出来る貴重な録音と言えるでしょう。なお、このCDの解説書ではカール・メーリケの生没年が(1807-1826)になっていますが誤り(詩は1832年の作。急死した弟アウグストと混同?)で、上記生没年は宮下健三著「メーリケ研究」(南江堂)の年表によるものです。
『オルムズの王アクスール』のCD(伊Nuova Era)を入手して調べたところ、2枚組の1枚目トラック20の”Come ape ingegnosa”で、バスとメゾによって交互に歌われていました。なかなかに典雅な佳曲で、メーリケが愛好したのも肯けます。ただしこのルネ・クレマンシック指揮による演奏はオケが弱体で、もし別の団体の録音があればその方が良いかもしれません。
( 2005.01.01 甲斐貴也 )