Im Park Op.62-8 Das Holdes Bescheiden |
庭園で 歌曲集「善き慎み」 |
Sieh,der Kastanie kindliches Laub hängt noch wie der feuchte Flügel des Papillons,wenn er die Hülle verließ; Aber in laulicher Nacht der kürzeste Regen entfaltet Leise die Fächer und deckt schnelle den luftigen Gang. - Du magst eilen,o himmlischer Frühling,oder verweilen, Immer dem trunkenen Sinn fliehst du,ein Wunder,vorbei. |
見よ 栗の樹の幼な葉が 蛹を抜け出たチョウの 濡れた翅のようにさがっている そして生暖かい夜の僅かな雨が その扇を音もなく拡げ 見る間に風の道を塞ぐ ・・・急ぎゆけ おお 素晴らしい春よ さもなくば留まれ 酔いしれた感覚を湧き起すお前 過ぎゆく奇跡よ |
いつもながらメーリケの自然観察眼に感銘を受ける、短いながら濃密な自然抒情詩です。この詩人その人こそ「酔いしれた感覚を湧き起す奇蹟」だと思います。
「蝶」に何故かフランス語のパピヨンPapillons が当てられていますが、ドイツ語のSchmetterling やFalterではうまくはまらなかったのでしょうか。そこで小細工ですが、いつもは漢字を使うところカタカナにしておきました。これらの語のいずれも「蝶」と「蛾」両方を指す語ですし、夜の情景の詩であることを考えると蛾の方がふさわしいかもしれませんが、美しさより毒々しさが勝ってしまうのでやめました。なお余談ですが、わが国では厳然と区別される蝶と蛾は、実際には生物学的に差異のない同一種の昆虫なのだそうです。
シェックの作曲は、ヴォルフの「クリスマスローズにU」に通じるような密やかで軽やかな小唄です。この曲にも二種の全集の他にエリザベート・グリュンマーのライブ録音(独オルフェオ)があり優れた出来栄えとなっています。
( 2004.12.09 甲斐貴也 )