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シベリア・エレジー    
 
 
    

詩: 野村俊夫 (Nomura Toshio,1904-1966) 日本
      

曲: 古賀政男 (Koga Masao,1904-1978) 日本   歌詞言語: 日本語


赤い夕陽が 野末に燃える
ここはシベリア 北の国
雁が飛ぶ飛ぶ 日本の空へ
俺もなりたや あの鳥に

月も寒そな 白樺かげで
誰が歌うか 故国(くに)の歌
男泣きする 抑留暮らし
いつの何時(いつ)まで 続くやら

春の花さえ 凋まぬうちに
風が変れば 冬が来る
ペチカ恋しい 吹雪の夜は
寝ても結べぬ 母の夢

啼いてくれるな シベリア鴉
雲を見てさえ 泣けるのに
せめて一言 故郷の妻へ
音便(たより)たのむぞ 渡り鳥



昭和23年、戦争が終わってもなおシベリアに抑留され、強制労働に従事させられている人々はたくさんいました。またその帰りを待ち望む家族は一家の大黒柱を欠いて大変な窮乏生活を余儀なくさせられていたのでした。そんな人々を慰めようと書かれたのがこの曲。弟を戦死させた古賀政男のメロディにも力が籠っています。戦争中に幾多の戦意高揚の歌詞を書いていた野村俊夫は 『軍国主義の世論に同調した過去を人一倍に反省し 「その罪滅ぼしの心算で、異国の地で望郷の念に駆られた同胞の実感を込めたこの唄を作詞した」と述懐している』(長田暁二 戦争が遺した歌 全音楽譜出版社)のだそうです。第2番に入る前の間奏には古賀政男の「誰か故郷を思わざる」の一節も絶妙に織り込まれ郷愁を誘います。歌は伊藤久男、作曲者は古関裕而と違いますがあの昭和15年、野村が詞を書いてこの伊藤が歌った「暁に祈る」と続けて聴くと本当に感慨深いものがあります。既に「暁に祈る」の歌の時から外地に駆り出されて行った人々の悲劇は始まっていたのだな...と。こんな時代が二度と来ないように、こんなことで苦しむ人たちが再び生まれないように、今を生きる人間として努めて行かなければならないのだと決意を新たにしたところです。

( 2017.02.26 藤井宏行 )


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