Bonne humeur |
すてきな気持ち |
Nous marchions sous la fine pluie, Le ciel était couleur de suie, Le vent soufflait,soufflait,soufflait; Le bois semblait toucher la nue, Et sa carcasse maigre et nue, De froid tremblait. Affrontant gaìment la tempête, Hâtant le pas,baissant la tête, Ninon,chantait,chantait,chantait, Et parfois,sur notre passage, Un oiseau,dans son clair langage, Lui répondait. L’air piquant animait sa joue; Tout en clapotant dans la boue, Elle sourit,elle sourit. En dépit de l’hiver morose, Nous gardons au coeur une rose Qui refleurit. |
わたしたちは霧雨の中を歩いてた 空はどんよりとした灰色 風も吹いて、吹いて、吹いて 木のてっぺんは雲に届きそう そして細い、裸の枯れ枝は 寒さに震えていた だけどうきうきして、風に向かい 足を早めて、頭を下げ ニノンは歌った、歌った、歌った そしてときどき 道すがら 小鳥が美しい声で 答えて歌う 冷たい空気は頬を赤くした 泥を跳ね上げるたびに 彼女は微笑む、微笑む 季節は暗い冬だけど わたしたちは心の中にバラを も一度咲かせている |
アンネ・ゾフィー・オッターがフランス作曲家の歌曲集として、今までほとんど聴くことのできなかったセシル・シャミナードの歌曲を25曲まとめて録音してくれたのは非常にうれしいことでした。ベル・エポック時代のお洒落な気分に満ち溢れたこれらの歌たちはクラシックというにはちょっと違うかも知れませんが、とても素敵な贈り物です。
彼女は生前は作曲家兼パフォーマーとして大変有名だったようで、今の日本で言うと西村由紀江さんみたいな人になるのでしょうか? 生涯で400曲近くの小品を残し、歌曲だけでも百数十曲あるのだそうです。
中でも私が気に入ったのは、厳しい冬の戸外を、若い恋人たちがそれでも楽しげに歩いている姿を描写したこの歌、スキップでもしていそうな弾むメロディが大変印象的です。原題の”Bonne humeur”ですが、国内盤では「ごきげん」と訳されているようです。歌もまあそんな感じにきこえないことはないのですがここでは恋人と一緒のうきうきするような気分を大事にして「すてきな気持ち」としてみました。
残念ながらフォン・オッターの他にシャミナードの歌曲をまとめて録音してくれている人はいないようで、私が聴いたのも彼女の歌のみなのですが、フランス歌曲でも抜群の存在感を見せる歌手ですからこれだけでも十分満足です。
作詞のアメリ・ド・ワリー(Amélie de Wailly)はこんな感じの軽い詩や童話などで知られた女性作家なのだそうです。フランスの大臣まで勤めた政治家の奥さんだったのだとか。没年が分かりませんでしたが、生年は1858年ということですので恐らく著作権も切れているだろうと思われます。
そこで訳だけでなく原詩を掲載させて頂きましたが問題があればお知らせください。
( 2003.10.28 藤井宏行 )