La Cucaracha |
ラ クカラチャ |
Una cosa me da risa Pancho Villa sin camisa Ya se van los Carrancista Porque vienen los Villista Para sarapes,Saltillo Chihua, para soldados Para mujeres,Jalisco Para amar toditos Lados La cucaracha,la cucaracha Ya no puede caminar Porque le falta,porque le falta Marihuana que fumar |
おれが笑っちまうのは シャツを着てない山賊パンチョ・ビリャ カランサのやつらは逃げていった ビリャの軍勢がやってきたから セラペスが欲しけりゃサルティージョ 兵士が欲しけりゃチワワに行け 女が欲しいやつぁハリスコだ 愛がほしけりゃどこへでも行け ラ・クカラチャ ラ・クカラチャ ゴキブリはもう歩けない だって切れてしまったから。だってもうないのだから 吸えるマリファナが |
「車にゆられて仕事に出かける」と、のどかな歌詞で日本では知られ、学校の音楽の教科書にもよく載っているメキシコの民謡「ラ・クカラチャ(ゴキブリ、の意)」ですが、実は1910年代、メキシコ革命のときの反乱軍の歌だってことは皆様ご存じでしたでしょうか。
「ぼくたちの顔に朝日がまぶしい」(佐木敏・詞)のような日本で一般的な歌詞ではどこがゴキブリなの?と小学生のときから大変疑問だったこの歌ですが、今回スペイン語の原詞を手に入れじっくりと時代背景なども調べてみるとなるほどと思うことばかり。
とても面白い詩ですし、ネット上でもちゃんと日本語訳をしているページがないようなのでこれを機会に訳してみました。
(民謡ですから実はこのご紹介した詩の他にも様々なバージョンがありますが、日本ではだいたい上にご紹介した詩で楽譜等にも載っていることが多いのでこれで訳します)
陽気な反乱軍のちょっと猥雑な感じのする詩は、メキシコ革命史やメキシコの文化に関する知識がないと意味がよく分からないと思いますので以下に少々補足を。
山賊パンチョ・ビリャというのは北部・チワワ州出身の義賊で、メキシコ革命に呼応し時の権力者たちに楯突いて活躍し現在に至るまで人気の高いメキシコの英雄です。カランサというのは1914頃のメキシコ大統領。もともとは革命側の人だったのですが権力を握ってからビリャと対立しています。
メキシコ革命史をみていると本当に次から次へと権力者が入れ替わり、まさに下克上の戦国時代。
この山賊ビリャも、そして大統領カランサものちに暗殺されています。
セラペスというのは、メキシコの民族衣装の肩掛け(写真などでよく見かけるカウボーイが使うやつです)。サルティージョというのは町の名前(この肩掛けの名産地か???)。
またビリャの軍勢の出身が多くはチワワ州だったので「兵士ならチワワ」なのでしょう。
ハリスコ州というと、マリアッチやテキーラで有名なメキシコ随一の文化地域。
それがあってか「男とすぐ寝る開放的な女が多い」という偏見があるみたいで、それが「女はハリスコ」のフレーズになっています。
(京都みたいに美人が多いから「女ならハリスコ」だという説もあるようですが)
ゴキブリというのは兵士たち自身を自虐的に歌っているのだと思います。幕末の高杉晋作率いる奇兵隊の進軍歌「きいて恐ろし みていやらしい 添うてうれしい 奇兵隊」の歌(都都逸)を連想します。
死と隣り合わせの兵士たちが気持ちを鼓舞するために吸うのはマリファナ。
と、これなら暴走族が改造バイクのクラクションにこのメロディを好んで使うわけも分かるような気がしませんか?
確かにこれでは学校の教科書には載せられない歌詞だ...
( 2004.10.08 藤井宏行 )