Chanson de l'Adieu |
別れの歌 |
Partir,c'est mourir un peu, C'est mourir à ce qu'on aime: On laisse un peu de soi-même En toute heure et dans tout lieu. C'est toujours le deuil d'un vœu, Le dernier vers d'un poème; Partir,c'est mourir un peu, C'est mourir à ce qu'on aime. Et l'on part,et c'est un jeu, Et jusqu'à l'adieu suprême C'est son âme que l'on sème, Que l'on sème en chaque adieu: Partir,c'est mourir un peu. |
別れ それは死ぬことだ ほんのわずかに それは死ぬことなのだ 愛するものにとっては 人は残していく 自らの一部を どんな時も どんなところにも それは常に 誓いを追悼すること 詩の最後の一行だ 別れ それは死ぬことだ ほんのわずかに それは死ぬことなのだ 愛するものにとっては だが一方で それは遊びのようなものだ 最後の別れが来るまでには 人はその魂を 蒔いて行くのだ 蒔いて行くのだ 別れのたびに 別れ それは死ぬことだ ほんのわずかに |
トスティのフランス語につけた歌曲の中では一二を争う有名曲でしょう。けっこうな大歌手たちの録音をいくつも耳にすることができます。生き別れも愛し合う者たちにとっては少し死ぬことと同じだけれども、それは本当の死にくらべたらほんのささやかなことだ、とえらく哲学的な詩です。曲もえらくしんねりとしたシャンソンによくあるようなメロディで始まりますが、途中でトスティ得意の長調への転調を果たします。しかし歌詞が歌詞だけに華やかに曲を閉じることはなく、しっとりと余韻を残して終わります。そういった曲想はカレーラスがお手のものでしょう。大変説得力のある歌唱です。
他方異色な演奏としてはかつての大テナー、ジュゼッペ・ディ・ステファノの歌があり、これは余韻もへったくれもなく劇的に盛り上がって終わります。曲本来のあり方からすると邪道なのでしょうけれど、この味わいは絶品料理です。
詩を書いたのはフランスの劇作家アロクール(イタリア読みはダロクールなのでトスティはそのように表記しています)。フォーレの劇音楽「シャイロック」のリブレットで名前が出て参りました。
( 2016.02.05 藤井宏行 )