今は御殿で女王さま 芥子粒夫人(ポストマニ) |
|
今は御殿で女王さま、 それでも、おづおづ、芥子粒夫人、 「いまに知れたらどうなるでしよか、 わたしや嘘つき、すぐ知れよ。」 ある日、木かげに腰かけて、 お菓子たべたべ見とれてた、 真赤な練絹、ふさふさ黒髪、 お池に映つた水鏡。 すずしい銀色、絹ヴエール、 桃いろ、紫、玉かざり。 つくづく見とれて、「まあまあ、御覧、 なんと綺麗な女王さま。」 そこへちよろちよろ、ちび鼠、 お砂糖の一かけいただこか。 「しつしつ、あつち行け、いやらしい鼠。」 足でちよつと蹴る芥子粒夫人。 すると鼠はちゆうちゆうちゆう、 「おまへわたしを知らないの。」 「いえいえ、知りやせぬ、なんの知らう。」 いやな顔して女王さま。 「おまへは母さんお忘れか、 ほらほら、お父さんも来てゐるよ。」 またも鼠がちよろちよろ出て来て、 「おおおお出世ぢや、これ娘。」 「わたしの婿さま、王さまだ、」 「おれも会ひたい王さまに、」 「婿だ、舅姑だ、お喜びなさろ、 おまへ会はせにや、わしらゆこ。」 「あらまあ、父さん、お母さん。」 元は娘のちび鼠、 「どうしよどうしよ、もう嘘知れる。」 ふらふら目まはし、池の中。 鼠の両親こりやどうぢや ちゆうちゆうどうしやう、なぜ死んだ。 わけもわからず、飛んで行つた、馳けた。 泣き泣きラシさん呼びに行つた。 魔法つかひのラシが来りや、 王さま泣き泣きござらしやる。 「陛下、まづまづまことを云へば、 芥子粒夫人こそちび鼠。」 「お亡くなられた芥子粒夫人、 あきらめあそばせ、為方ない、 なにかいいことござりましよ、ござろ、 今にしあはせ、うめ合せ。」 |
|
曲集を纏めたページに全体のコメントを記載しています。
芥子粒夫人(ポストマニ)
( 2015.10.10 藤井宏行 )