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今は御殿で女王さま    
  芥子粒夫人(ポストマニ)
 
    

詩: 北原白秋 (Kitahara Hakusyuu,1885-1942) 日本
      今は御殿で女王さま

曲: 山田耕筰 (Yamada Kousaku,1886-1965) 日本   歌詞言語: 日本語


今は御殿で女王さま、
それでも、おづおづ、芥子粒夫人、
   「いまに知れたらどうなるでしよか、
   わたしや嘘つき、すぐ知れよ。」

ある日、木かげに腰かけて、
お菓子たべたべ見とれてた、
   真赤な練絹、ふさふさ黒髪、
   お池に映つた水鏡。

すずしい銀色、絹ヴエール、
桃いろ、紫、玉かざり。
   つくづく見とれて、「まあまあ、御覧、
   なんと綺麗な女王さま。」

そこへちよろちよろ、ちび鼠、
お砂糖の一かけいただこか。
   「しつしつ、あつち行け、いやらしい鼠。」
   足でちよつと蹴る芥子粒夫人。

すると鼠はちゆうちゆうちゆう、
「おまへわたしを知らないの。」
   「いえいえ、知りやせぬ、なんの知らう。」
   いやな顔して女王さま。

「おまへは母さんお忘れか、
ほらほら、お父さんも来てゐるよ。」
   またも鼠がちよろちよろ出て来て、
   「おおおお出世ぢや、これ娘。」

「わたしの婿さま、王さまだ、」
「おれも会ひたい王さまに、」
   「婿だ、舅姑だ、お喜びなさろ、
   おまへ会はせにや、わしらゆこ。」

「あらまあ、父さん、お母さん。」
元は娘のちび鼠、
   「どうしよどうしよ、もう嘘知れる。」
   ふらふら目まはし、池の中。

鼠の両親こりやどうぢや
ちゆうちゆうどうしやう、なぜ死んだ。
   わけもわからず、飛んで行つた、馳けた。
   泣き泣きラシさん呼びに行つた。

魔法つかひのラシが来りや、
王さま泣き泣きござらしやる。
   「陛下、まづまづまことを云へば、
   芥子粒夫人こそちび鼠。」

「お亡くなられた芥子粒夫人、
あきらめあそばせ、為方ない、
  なにかいいことござりましよ、ござろ、
  今にしあはせ、うめ合せ。」



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   芥子粒夫人(ポストマニ) 

( 2015.10.10 藤井宏行 )


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