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綺麗な綺麗なちび鼠    
  芥子粒夫人(ポストマニ)
 
    

詩: 北原白秋 (Kitahara Hakusyuu,1885-1942) 日本
      綺麗な綺麗なちび鼠

曲: 山田耕筰 (Yamada Kousaku,1886-1965) 日本   歌詞言語: 日本語


「綺麗な綺麗なちび鼠、
おまへにお話さしてあぎよ。」
   魔法つかひは呪文をとなへ、
   さあさあお食べよ、米の粒。

魔法つかひとちび鼠、
お話しいしい暮らしてた。
   ガンヂス河の堤の上の、
   棕梠葉のお小屋のむしろ小屋。

それもしばらくちび鼠、
悲しくなつたで、ちゆうちゆうちゆう、
   「変へて下され、鼠にや飽いた。」
   「なにになりたい。」「なににでも。」

「猫にしてやろ。」にやんにやんにやん、
猫になります、ちび鼠。
   「変へて下され、猫にも飽いた。」
   「なにになりたい。」「なににでも。」

「犬にしてやろ。」わんわんわん、
犬になります、三毛猫が。
   「変へて下され、犬にも飽いた。」
   「なにになりたい。」「なににでも。」

「猿にしてやろ。」きやつきやつきやつ、
猿になります、むく犬が。
   「変へて下され、猿にも飽いた。」
   「なにになりたい。」「なににでも。」

「野猪(のじし)にしてやろ。」ふうふうふう、
猿が野猪に変ります。
   「変へて下され、美しき人に、
   ああ、ああ、野猪はいやらしい。」

そこで一と振り、魔法杖、
見れば綺麗な娘の子。
   真赤な練絹、ふさふさ黒髪、
   金の腕環や髪かざり。

綺麗な綺麗なその娘、
芥子粒夫人(ポストマニ)と名がついた、
   今度は楽しいお邸(やしき)ずまひ、
   棕梠の葉お小屋はふり棄てる。



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   芥子粒夫人(ポストマニ) 

( 2015.10.10 藤井宏行 )


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