短夜 |
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えいやえい、えいやえい、 沖へ消ゆるは幽靈舟か、 白い日の出の雨霧に。 えいやえい。 いつそ死のかと、恨んだ空も、 えゝ、夜さへ明ければ、此方のもの。 えいやえい、えいやえい。 |
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タイトルは「みじかよ」と読みます。舟を漕ぐ船頭の勇壮な歌声をそのまま歌にしたような迫力ある歌。微妙に音が揺らいで西洋音楽らしくない伝統的な唱法の雰囲気を醸し出すことに成功しております。白秋の詩の中では「日本の笛」などと並んで日本情緒の色濃い作品を集めている「白秋小唄集」より選んでいますからこの処理は妥当なところでしょう。初出は女性雑誌に掲載されたのだそうですが、こんな本格的な歌曲を雑誌の読者が気軽に歌えたとも思えず、その意図は謎です。雑誌の依頼にも関わらず耕筰がインスピレーションの赴くままに曲を付けたといったところなのでしょうか。
( 2015.10.08 藤井宏行 )