野のわる狐 |
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野のわる狐 わるざれに 化けて咲くとよ 彼岸花 路まどわする 火の花に な触そ袖を 旅人よ |
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小山がまだ中学校の教員だった時代の昭和25年に作曲された作品。詩も昭和19年出版の詩集「花筐」の中のものだそうですので、ほとんど同時代の作と言えるでしょうか。秋のお彼岸の時期に咲く真っ赤で妖艶なヒガンバナの怪しさを狐の妖術に絡めて不思議な情感の詩ですが、それに輪をかけて小山の音楽は鮮烈です。平井康三郎ばりの日本情緒炸裂のメロディなのですが、リズミカルに響くピアノ伴奏との掛け合いは一度聴いたら忘れられない雰囲気。こういう日本歌曲はありそうでいて意外と少ないのでとても貴重です。
第5集までで止まってしまったことがとても残念な鮫島有美子さんの日本歌曲集5で、伴奏のドイチュ氏と共にほんのりと西欧風のテイストをまぶしてたいへん面白い聴きものにしてくれていました。
( 2015.04.19 藤井宏行 )