田舎娘とふるさと |
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今年生誕100年を迎える作曲家小山清茂、小学校の音楽の教科書にも載っていた「管弦楽のための木挽歌」で有名ですが、小林一茶の句につけたものなど歌曲作品でもけっこう着目すべき作品を色々書いています。中でも私が一番の傑作だと思うのは、現代日本歌曲にたくさん詩が取り上げられている詩人堀内幸枝さんの詩につけたこの曲。小山は日本情緒を素朴な筆致で描き出すことにたいへんたけた作曲家ですから、この詩のように田舎からただひとり出てきた若い娘の孤独と貧しさをしみじみと噛みしめる歌は見事としか言いようがありません。まるで箏のような伴奏のピアノに新内の語りのような歌。
一度聴いただけで忘れ難い印象を残してくれます。特に二度繰り返される「お腹がぺったんこ」のフレーズがこの曲想にマッチして思わずほほ笑んでしまいます。孤独と望郷と、そして空腹と、仕事のあてもなく大都会に出てきた経験のある人には実感あふれる内容ではないでしょうか。
図書館などに行けば「堀内幸枝全詩集」というのがありますので、全体の歌詞はそこで確かめて頂くとして、一部の引用はお許し願えればということで、私には一番印象深い第3節の歌詞を。ひらがなの使い方も含め、文字だけ見ても絶妙の味わいです。
東京の真中で
はじめての
恋もしたが
やっぱりお腹がぺったんこ
ふるさとの かやの実
栗の実 いちょうの実
いっぱいたべたいな
( 2014.09.27 藤井宏行 )