Auf dem Krankenbette Op.62-38 Das Holdes Bescheiden |
病床にて 歌曲集「善き慎み」 |
Gleichwie ein Vogel am Fenster vorbei mit sonnebeglaenztem Fluegel den blitzenden Schein wirft in ein schattig Gemach, Also,mitten im Gram um verlorene Jahre des Siechbetts,Überraschet und weckt leuchtende Hoffnung mich oft. |
鳥が窓辺を飛ぶとき 陽光を浴びた翼がきらめいて 翳った部屋に光を投げ入れるように 長患いの歳月を嘆くさなかにも 光りを放つ希望が私を驚かせ 目覚めさせることがしばしばある |
オトマール・シェックの歌曲集「好ましき慎み」Das Holde Bescheiden 作品62のCDをようやく聴くことが出来ました。この作品はメーリケの詩による全40曲の大作歌曲集で、しかもヴォルフの作曲したものと重なる詩はわずかで、ほとんどヴォルフのメーリケ歌曲集の続編のような曲集です。ヴォルフが作曲していないメーリケの代表作「ランプに寄す」も含まれています。
この作品の世界初録音が、フィッシャー=ディースカウと白井光子&ヘルという豪華な顔合わせでクラーベスに録音されており、それがF=D氏現役最後の録音であることまでは知っていたのですが、不勉強でシェックのことも良く知らず、またそれがメーリケの詩による歌曲集であることも知らずに買い逃していました。その日本盤は中古でも滅多に見かけませんが、台東区図書館に収蔵されているのを知り、やっと手にすることができました。全曲しっかり鑑賞するのには時間がかかりそうですが、とりあえず詩をぱらぱらと眺めて、短くてしかも印象に残るものを一編選んで訳してみました。
一行が妙に長いのに気づかれたと思いますが、ドイツ語の原詩がこのような長めの二行詩なのでその形を再現してみました。あまり曲になりそうにない短詩で、ヴォルフが作曲しなかったのもうなずける気がします。シェックの曲はまだいまひとつピンと来ないのですが、ピアノで光のきらめきが表現されているのが印象的な小品です。キャリアの最後であるにもかかわらずF=D氏は好調で衰えを感じさせません。ヘル氏のピアノも見事。
( 2003.06.13 甲斐貴也 )