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Requiem aeternam   Op.66-1  
  War Requiem
永遠の安息を(レクイエム・エテルナ)  
     戦争レクイエム

詩: 聖歌 (Hymn,-)   &  オーウェン (Wilfred Edward Salter Owen,1893-1918) 
    死者のためのミサ曲  Requiem aeternam / Anthem for Doomed Youth(Owen 1917)

曲: ブリテン (Edward Benjamin Britten,1913-1976) イギリス   歌詞言語: ラテン語/英語


Chorus
Requiem aeternam dona eis,Domine,
et lux perpetua luceat eis.

Boys' choir
Te decet hymnus Deus,in Sion,
et tibi reddetur votum in Jerusalem:
exaudi orationem meam,
ad te omnis caro veniet.

Tenor solo
What passing bells for these who die as cattle?
Only the monstrous anger of the guns.
Only the stuttering rifles' rapid rattle
Can patter out their hasty orisons.

No mockeries for them from prayers or bells,
Nor any voice of mourning save the choirs,--
The shrill,demented choirs of wailing shells;
And bugles calling for them from sad shires.

What candles may be held to speed them at all?
Not in the hands of boys,but in their eyes
Shall shine the holy glimmers of good-byes.

The pallor of girls' brows shall be their pall;
Their flowers the tenderness of silent minds,
And each slow dusk a drawing-down of blinds.

(From Owen's “Anthem for Doomed Youth”)


Chorus
Kyrie eleison.
Christe eleison.
Kyrie eleison.

合唱
永遠の安息を彼らに与え給え 主よ
そして絶えざる光で彼らを照らし給え

少年合唱
あなたに讃歌がふさわしいのです 神よ このシオンで
そしてあなたに誓いが返されます エルサレムでは
お聞きください わが祈りを
すべての肉体はあなたの元に返るのです(詩編65:2-3)

テノールソロ
どんな弔いの鐘があるというのか 家畜のように死んでゆく者共に?
ただ大砲の化け物のような怒りだけが
ただうなり返すライフルのすばやい銃声だけが
せわしない祈りを唱えている

彼らのために偽善はいらぬ 祈りや鐘からの
悼みの声もいらぬ ただこの合唱の他には
あの金切り声 泣き叫ぶ砲弾のいかれたような合唱や
そして彼らに悲しい異郷より呼び掛ける進軍ラッパの他には 

どんなロウソクが彼らを一度に弔うために掲げられようか?
少年兵たちの手の中ではなく 彼らの瞳の中に
告別の聖なる光が輝くのだろう

少女たちの額の蒼ざめが 彼らの棺の覆い布となるだろう
彼らの花には 静かな心の優しさ
そしてゆっくりとやってくる黄昏が ブラインドとなって降ろされる

(『死すべき定めの若者のための賛歌』より)


合唱
主よ 憐れみ給え
キリストよ 憐れみ給え
主よ 憐れみ給え



1962年、第2次大戦中にドイツ軍の空爆によって破壊されたイギリス・コヴェントリーの大聖堂が再建された祝賀のために作曲されたブリテンの傑作のひとつです。ソプラノ独唱と児童合唱を伴う合唱による伝統的なラテン語のレクイエムの歌詞の間に、第1次大戦でわずか25歳の若さで戦死したイギリスの詩人ウィルフレッド・オーウェンの戦争を語った詩9篇をテノールおよびバリトンの独唱でちりばめ、戦争で亡くなった人々の追悼をしています(彼自身、この曲は第2次大戦で亡くなった彼の知人たちに献呈しています)。オーウェンの生々しい戦争の情景を描き出した詩が敬虔なラテン語の音楽と入り混じって大変印象的な作品に仕上がっています。
初演時にはブリテンは各国和解の印として、英・独・ソヴィエトから歌手を呼ぼうということで、彼の盟友ピーター・ピアーズ(英・テナー)、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(独・バリトン)、そして彼の親友ロストロポーヴィッチの夫人ガリーナ・ヴィシネフスカヤ(ソ・ソプラノ)に依頼しましたが、残念なことにヴィシネフスカヤはソビエト当局の許可が下りず、代わりにイギリスのソプラノ、ヘザー・ハーパーが歌いました。翌1963年1月にデッカに録音された彼の自作自演(ロンドン交響楽団&合唱団)ではヴィシネフスカヤを迎えて最初の狙い通りの3歌手のそろい踏みとなり、この録音は今も語り継がれるこの曲の代表盤となっています。
オーウェンの詩は比喩の仕方が大変に難しく、多くのところで意味がうまく取れませんでした。中元初美氏による「ウィルフレッド・オウェン戦争詩集」(英宝社)による見事な翻訳にたいへん助けられたことを付記しておきます。

第1曲目、伝統的なレクイエムの典礼文を合唱が陰鬱に紡ぎ出す中、突如鮮烈なテナーのソロが入ってきます。怒りに満ちたようなそのモノローグは、戦場における乾いた轟音だけをこだまのように響かせます。ソネット後半の6行、特に少女たちの出てくる最後の3行は死んで行く少年兵の見た幻影なのではないでしょうか。テナーの語りは合唱の祈りの声に引き継がれ、静かに曲を閉じて行きます。

( 2013.05.26 藤井宏行 )


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