Out on the Lawn I Lie in Bed Op.44-8 Spring Symphony |
芝生の上 私は寝床に横たわる 春の交響曲 |
詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
|
芝生の上 私は寝床に横たわっている ベガの星がくっきりと頭上にある 六月の風のない夜に 緑の森はすっかり終えてしまった 一日の活動を 私の足先は 昇る月を指している 今 北や南や東や西で 私が愛している人々は横になって休んでいる 月は彼ら皆を見下ろしている 癒し人や鮮烈な話し手 変人に沈黙した歩行者 ずんぐりした者も 背の高い者も 重力には敏感でも 月は この地上のことには無関心だ たとえわれらが 空腹で動くことができずにいようとも、 我々が安全だと感じている庭園から 見上げているのも、ため息をついて耐えるのも 愛の暴政を そして、穏やかに 知ろうとなどするな どこに向かってポーランドがその東の弓を引くかや どんな暴力がなされているかなど 尋ねるな どんな疑わしい行為が許しているのかなど この英国の家での自由や この太陽の下でのピクニックを (著作権のため詞は大意です また原詩の掲載は控えます) |
この曲の詩のみ20世紀の詩人W.H.オーデン(1907-1973)。ブリテンの同時代人として、また友人として彼にたくさんのテキストを提供した人です。この詩は6月とありますので、日本人の感覚で言えば夏ですが、涼しいイングランドではまだ春の範疇なのでしょうか。何よりもこの痛烈な政治的なメッセージがこの音楽の中に織り込まれていることがブリテンの面目躍如といったところでしょうか。
大意ということでかなり雑に訳してしまいましたので(それと元の詩がとても難しいので)うまく意味が取れていないのかも知れませんが、イングランドの夜をのんびりと過ごしている人々の後ろには苦しみと悲劇に満ちた世界があるということでしょう。オーデンの1933年の詩だということですので第2次世界大戦の前、ちょうどナチスがドイツで政権を握った頃にあたります。そのドイツがポーランドに侵攻するのは1939年ですからまだ先のことですが、何とはなしにそのような歴史を予見させる不気味な内容です。
ハミングによる合唱に乗って、これもアルトの独唱がゆっくりと歌詞をつぶやきます。
( 2013.04.14 藤井宏行 )