いたち 六つの子供の歌 |
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あかい手ぬぐいあねさまかぶり いたち見つけた、ちらりと見えた。 よもぎ菜のはなよこみち小みち いたちかくれた、ちらりときえた。 子どもこのみち、よこゆくいたち 手ん手はなすな、ひとりは こわい |
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團 伊玖麿といえば、交響曲をはじめとする管弦楽作品や室内楽・器楽作品もたくさんありますが、まずは「夕鶴」を代表作としたオペラや「岬の墓」「筑後川」といった合唱曲、そしてたくさんの魅力的な歌曲と、日本の声楽作品の大家と言っても良いでしょうか。興味深いのは歌曲に関していえば、1945年の終戦後から1940・50年代にそのほとんどすべてが書かれていることです。またこの歌曲集もそうですが、北原白秋の詩をこの世代の作曲家の中ではとりわけ好んで多く歌にしているということも挙げられるでしょうか。
この歌曲集「六つの子供の歌」は1946年の作曲、作品番号3がついていますことからおわかりのように彼のごく初期の作品です。白秋の民謡風の素朴な感じのする詩に、抒情的な、しかし若々しくも才気あふれるメロディをつけていますので、一部の曲は今でも良く取り上げられますでしょうか。
第1曲目はユーモラスな田舎の情景を描写している詩ですので、メロディの方も山田耕筰のような雰囲気を醸し出す素直なものですが、伴奏がそれに囚われない斬新な響きをそこかしこに出しているので不思議な雰囲気の歌になりました。特に冒頭のピアノ導入の斬新な響きからちょっと間をおいて山田風のメロディが出てくるあたりなかなかに見事。最終曲の「雪女」とならんでこの歌曲集の中でもひときわ印象の強い曲といえましょうか。
( 2011.05.29 藤井宏行 )