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せめて死の時には    
  盲目の秋
 
    

詩: 中原中也 (Nakahara Chuuya,1907-1937) 日本
    山羊の歌(1934)  盲目の秋 4

曲: 石桁真礼生 (Ishiketa Mareo,1916-1996) 日本   歌詞言語: 日本語


せめて死の時には、
あの女が私の上に胸を披(ひら)いてくれるでせうか。
  その時は白粧(おしろい)をつけてゐてはいや、
  その時は白粧(おしろい)をつけてみてはいや。

ただ静かにその胸を破いて、
私の眼に輻射してゐて下さい。
  何にも考へてくれてはいや、
  たとへ私のために考へてくれるのでもいや。

ただはららかにはららかに涙を含み、
あたたかく息づいてゐて下さい。
──もしも涙がながれてきたら、

いきなり私の上にうつ俯して、
それで私を殺してしまつてもいい。
すれば私は心地よく、うねうねの暝土(よみぢ)の径を昇りゆく。



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   盲目の秋 

( 2010.11.26 藤井宏行 )


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