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Lied der Lulu    
  Lulu Suite
ルルの歌  
     ルル組曲

詩: ヴェーデキント (Frank Wedekind,1864-1918) ドイツ
      

曲: ベルク (Alban Maria Johannes Berg,1885-1935) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Wenn sich die Menschen um meinetwillen umgebracht haben,
so setzt das meinen Wert nicht herab.
Du hast so gut gewußt,weswegen du mich zur Frau nahmst,
wie ich gewußt habe,weswegen ich dich zum Mann nahm.
Du hattest deine besten Freunde mit mir betrogen,
du konntest nicht gut auch noch dich selber mit mir betrügen.
Wenn du mir deinen Lebensabend zum Opfer bringst,
so hast du meine ganze Jugend dafür gehabt.
Ich habe nie in der Welt etwas anderes scheinen wollen,
als wofür man mich genommen hat.
Und man hat mich nie in der Welt für etwas anderes genommen,
als was ich bin.

もしも男たちがあたしのせいで自殺したって
そのことがあたしの値打ちを下げたりはしない
あなたは良く分かってるわよね、どうしてあなたがあたしを妻にしたのか
ちょうどあたしも分かってたように、どうしてあなたを夫にしたのかを
あなたはあたしと一緒にあなたの親友たちを欺いてきたけど
おなじようにあなた自身をあたしのことで欺くことはできなかった
あなたがあたしのことを自分の人生の黄昏のための生贄にしようっていうのなら
それってあなたがあたしの青春全部をそのために奪うことだわ
あたしはこの世で決して他の何物であろうとしたことはないの
人があたしをそう思っている姿以外には
そして誰もこの世であたしを他の何物とも思ったことはないわ
あたしのありのまま以外の


アルバン・ベルクの傑作オペラ(1935)、残念なことに未完に終わってしまいましたが、鮮烈なドラマと、それに輪をかけて強烈な音楽で20世紀のオペラ作品の中でもとりわけ評価の高い「ルル」から、第2幕でヒロインのルルが、その奔放さに対して嫉妬に狂い、ピストルで自殺するように強要してきた夫のシェーン博士に対して開き直って歌う激しい歌。このあと彼女は奪ったピストルでシェーンを撃ち殺してしまいます。
国や時代が変わっても、こんなお話は相変わらず三面記事を賑わせていますから、「愛」というものの永遠の業なのでしょう。ベルクのもうひとつの傑作オペラ「ヴォツェック」と合わせ、あまりうきうきと楽しく見られるものではありませんが、舞台や映像で見ると思わず圧倒されてしまう凄い作品です。
このオペラから5つのシーンを作曲者自身が選び出し、組曲としたのがしばしばオーケストラコンサートで聴くことのできる「ルル組曲です。5曲の中身ですが、1:ロンド〜第2幕で夫シェーンの息子アルヴァがルルに求愛する部分。このことも原因となりシェーンは嫉妬に狂うのです。2:オスティナート〜第2幕中間に置かれた場面展開の音楽。3:ルルの歌〜ご紹介した曲です。歌が入ります。4:変奏曲〜第3幕。夫殺しで警察に追われ、ロンドンの貧民街に売春婦として身を隠しているルルの情景を描写する第1場と第2場の間の間奏曲。5:アダージョ〜売春の客として現れた殺人鬼切り裂き魔ジャックがルルを殺害するシーンの音楽。ルルの最期の悲鳴が聞こえます。音楽は最後に、彼女とレズピアンの関係にあったゲシュビッツ伯爵夫人の次のようなモノローグで終わります。

  Lulu! - Mein Engel! - Lass dich noch einmal sehen!
  - Ich bin dir nah! - Bleibe dir nah - in Ewigkeit!

  ルル!あたしの天使!あたしにもう一度会わせてちょうだい!
  あたしはあなたのそばにいるわ!ずっとそばにいて 永遠に!

長大なオペラを聴くのが苦手な方にも、この35分ほどの組曲はオペラの充実した音楽を堪能させてくれるガイドとしてとても有難いものでしょう。興味深いのはこの手の管弦楽抜粋というと大抵の場合、オペラが完成し、上演されてからあとに編まれるのですが、この「ルル組曲」だけはオペラの完成より前に、予告編としてこの組曲をまとめているという異色の出自です。ベルクの気合の入った傑作として何とも聴きごたえがあります。

( 2010.05.01 藤井宏行 )


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