Spes’ |
傲慢 |
Khodit Spes’ naduvajuchis’, S boku na bok perevalivajas’. Rostom Spes’ arshin s chetvert’ju, Shapka-to na nem vo tselu sazhen’. Puzoto u Spesi v zhemchuge, szadito u Spesi razzolocheno. A i poshjol by Spes’ k ottsu k materi, Da vorota ne krasheny! A i pomolilsja b Spes’ vo tserkvi bozhiej, Da pol ne meten! Khodit Spes’,vidit na nebe radugu; Povernul Spes’ vo druguju storonu: Ne prigozhe-de mne nagibatisja! |
傲慢が歩いている、でかい顔をして 脇へ脇へと他人を押しのけて 背丈はたったの1アルシンと4分の1だが かぶっている帽子の幅は1サージェンもある 傲慢の腹には真珠 傲慢の背には金ぴかメッキ 傲慢が父や母のもとを訪れることがあっても 実家の門が塗られていたためしはない 傲慢が教会でお祈りするときでも 教会の床が掃き清められたことはない 傲慢が行く手の空に虹を見かけたとき やつは戻ってきてこう言うのだ 「俺は頭を下げるなんて柄じゃないからな」と |
ボロディン晩年の歌曲。といっても彼は53歳で急死していますからそんなにおじいさんの時というわけでもありません。それでも1884年頃の作といいますから50歳前後、にしてはこの反骨精神とユーモアはなかなか素敵です。「傲慢な態度」を擬人化していますが、何となく現在でも相も変わらずよく見かけそうな光景ですね。歌詞の中にあるアルシンというのは昔のロシアの長さの単位でおよそ71cm、ですから傲慢の背はこの1.25倍で90cm弱ということになるでしょうか。またサージェンというのも長さの単位で、1サージェン=3アルシンだそうです。ですので帽子の幅は2.13メートル、背が低いのを笑い物にすると差別になってしまいそうなところもありますが、身の丈にまるで合わないものをつけて威張って歩くのはやはり可笑しいでしょう。ユーモラスな傲慢の行進は思わず微笑んでしまうようなメロディです。
彼の初期作品に多くあった、声にピアノとチェロが付くスタイルでこの曲はしばしば演奏されますが、こんな編曲も曲想に良くはまっています。ボリス・クリストフみたいに昔の芸達者な人の歌が実に面白く聴けました。
( 2008.08.01 藤井宏行 )