ブルース |
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泣くなんて小さなこと 溜息つくのもつまらないこと だけど、こんな些細なことと引き換えに 私たちは男も女も 死ぬ! |
It's such a little thing to weep, So short a thing to sigh; And yet by trades the size of these We men and women die! |
ラングストン・ヒューズやジャック・プレベールといった20世紀のポップな詩人たちの
日本語訳に付けた歌に加えて、このエミリー・ディキンソンの短い詩(中島完 訳)に付けた歌が
最後を飾る「日本に来た外国詩」という高田渡のアルバムはそのコンセプトが非常に
興味深いです。そしてディキンソンのこの詩をテキストに選ぶあたりも実に素晴らしい。
タイトルはオリジナルにはない「ブルース」というものがついていますが、この詩の感じはまさにディッキンソンです。短いですが非常に含蓄があります。(彼女の詩のNo.189になります)
例によって中島完氏の訳は著作権があって載せられませんので、自分で訳したものを載せます。
が、3行目の意味が取りにくい...ここでいうtheseというのは泣いたり溜息ついたりするちっぽけな
ことやつまらないことでしょう。ですからby tradesというのはそんなことをやってしまうから命を失ってしまうのだ、ということになるのでしょうか。“size of”というのが意味が取れませんでしたが、概ねそんな意味かと思います。教訓めいたニュアンスも読めなくはありませんが、もっと突き放した感じ。
それこそがこの歌に、高田渡が「ブルース」というタイトルをつけたゆえんでしょうか。
( 2007.12.30 藤井宏行 )