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Svetik Savishna    
 
愛しのサーヴィシナ  
    

詩: ムソルグスキー (Modest Petrovich Mussorgsky,1839-1881) ロシア
      Светик Савишна

曲: ムソルグスキー (Modest Petrovich Mussorgsky,1839-1881) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Svet moj Savishna,sokol jasnen’kij,
Poljubi menja nerazumnova,
Prigolub’ menja goremychnova!
Oj-li,sokol moj,sokol jasen’kij,
Svetik Savishna,svet Ivanovna,
Ne pobrezgaj ty gol’ju goloju,
Bestalannoju moej doleju!
Urodilsja vish’ na smekh ljudjam ja,
Pro zabavu da na potekhi im!
Klichut: Savishna,skorbnym razumom
Velichajut,slysh’,Vanej Bozhiim,
Svetik Savishna,svet Ivanovna,
I dajut pin’kov Vane Bozh’emu,
Kormjat chestvujut podzatyl’nikom.
A pod prazdnichek kak razrjadjatsja,
Uberutsja vish’ v lenty alye,
Dadut khlebushka Vane skorbnomu,
Ne zabyt’ chtoby Vanju Bozh’ego.
Svetik Savishna,jasnyj sokol moj,
Poljubi-zh menja neprigozheva,
Prigolub’ menja odinokova!
Kak ljublju tebja,mochi net skazat’,
Svetik Savishna,ver’ mne,ver’ ne ver’,
Svet Ivanovna!

愛しいおいらのサーヴィシナ 輝くファルコン
愛しておくれ 馬鹿なおいらを
優しくしとくれ 不幸なおいらを!
ああ おいらのファルコン 輝くファルコン
愛しいサーヴィシナ 愛しいイワノーヴナ
嫌わないでおくれ この貧しい乞食を
不運なおいらとの巡り会いを!
ぶざまなおいらは 人に笑われ
慰み者になるが定めなんだ
あだ名は サーヴィシナ 病気の脳みそさ
あざけり呼ばれる 聖ワーニャって
愛しいサーヴィシナ 恋しいイワノーヴナ
みんなこの聖ワーニャを足蹴にして
祝福してくれる 頭を殴りつけて
お祝いをする 着飾らせて
真っ赤なリボンを付けてから
哀れなワーニャにパンを恵むんだ
聖ワーニャを忘れたりしないようにと
いとしいサーヴィシナ おいらのきれいなファルコン
愛しておくれ 醜いおいらを
優しくしとくれ ひとりぼっちのおいらを!
どんなにあんたが好きかなんて とても言えない
愛しいサーヴィシナ 信じておくれ 信じようと信じまいと
愛しいイワノーヴナ!


4分の5拍子の単純なリズムが延々と叩き付ける中息をもつかずに歌が続いていく。微妙に短調と長調の間を揺れ動きながら...個性的なムソルグスキー歌曲の中においてもかなりインパクトの強い作品です。彼のオペラ「ボリス・ゴドノフ」でも重要な登場人物として出てきましたが、知能に障害がありそれゆえに貧しい乞食の身に落ちた男の悲しい姿を描写しています。この詩にあるように障害者は馬鹿にされ、差別されなからもその純粋な心ゆえにある意味畏れの対象にもなっている。ロシア正教ではこのような人のことをユロージヴィ(聖愚者あるいは聖痴愚)と呼ぶようですが、これはロシアだけのことではなく世界共通に見られるキャラクターのようです。日本でもそんな感じの愚か者が神様のお使いだったというような民話がいくつもありますね。ですが、こんなひどい差別を受けていても人間であるがゆえに恋もすれば悲しみもする。虐げられた人たちに優しくも暖かい眼差しを向けたムソルグスキーだからこそこのような音楽は作れたのでしょう。作詞も彼の歌曲で虐げられた者を代弁するときは大抵そうであるようにムソルグスキー自身の詩を使っています。
ファルコン(鷹 Sokol)というのはロシア語では眉目秀麗たる若者のことをいうのだそうで、辞書では男性のことを言っているようでしたが(男性名詞でしたし)、ここでは名前がサーヴィシナと女性でもありますので女性の描写にも使うことがあるのでしょうか。よく分からなかったので「ファルコン」を使いました。「鷹よ」でも良かったのですがあまり語呂が良くないので。またSvetというのは光という意味ですので「輝くサーヴィシナ」と訳されることもありますが、これにも「恋しい」という意味があるようですので「愛しい」に統一しています。

クリストフやレイフェルクスなどのバス歌手の歌が曲想に良く合っているでしょうか。「ボリス・ゴドノフ」との繋がりを考えるとテノールでも聴いてみたいところです。またヴィシネフスカヤの歌うこの歌も絶唱。先日亡くなった巨匠ロストロポーヴィチの力強いピアノ伴奏に支えられてこの悲しくも美しい歌を歌っています。

( 2007.05.03 藤井宏行 )


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