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Gopak    
 
ホパーク  
    

詩: メイ (Lev Aleksandrovich Mei,1822-1862) ロシア
      Гопак 原詩: Taras Hryhorovych Shevchenko シェフチェンコ,Гайдамаки

曲: ムソルグスキー (Modest Petrovich Mussorgsky,1839-1881) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Goj! gop,gop,gopaka!
Poljubila kazaka,
Tol’ko staryj da ne djuzhij,
Tol’ko ryzhij,neukljuzhij,
Vot i dolja vsja poka! Goj!

Dolja sledom za toskoju,
A ty staryj za vodoju,
A sama to ja v shinok
Da khvachu sebe krjuchok,
A potom vse chok da chok,vse chok da chok.

Charka pervaja kolom,a vtoraja sokolom,
Baba v pljas poshla vkonets,
A za neju molodets,
Staryj,ryzhij,babu klichet,
Tol’ko baba kukish tychet.

Kol’ zhenilsja,satana,
Dobyvaj-zhe mne pshena,
vot chto!
Nado detok pozhalet’,nakormit’ i priodet’.
Vot kak!
Dobyvaj,smotri,byt’ khudu,
A ne to sama dobudu!
Slysh’ ty!
Dobyvaj zhe,staryj,ryzhij,
Dobyvaj skorej,besstyzhij!
Chto,vzjal!
Tol’ko,staryj,ne greshi,
Kolybel’ki kolyshi,
Kolybel’ki,staryj,kolyshi,
vot tak!

Kak byla ja molodoju
da ugodnitseju,
Ja povesila perednik
nad okonnitseju,
I v okoshechko kivaju,
v pljal’tsakh shelkom vyshivaju.

Goj,Semeny vy,Ivany,
nadevajge-ka kaftany,
Da so mnoj guljat’ pojdemte!
Da prisjadem,zapoemte!
Goj! Goj! Goj! Goj! Goj! Goj! Goj! Goj! Goj!

Goj,gop,gop,gopaka!
Poljubila kazaka,
Tol’ko staryj da ne djuzhij,
Tol’ko ryzhij,neukljuzhij,
Vot i pravda vsja poka. Goj!

ホーイ、ホップ、ホップ、ホパークよ!
あたしが惚れたのはコサックよ、
でもヨボヨボのジジイだし、
おまけに赤毛でブサイクなの、
全く何て運命かしら、ホーイ!

うっとうしいったらありゃしない、
ジジイ 水を汲んできな、
あたしは酒場に行ってくるわ、
ちょっと一杯ひっかけよう、
でもまた一杯、もう一杯、でもまた一杯、もう一杯

はじめの一杯はガツンとくるが、二杯目からはぐいぐいイケる
おかみさん、とうとう踊り出す!
若い男も寄ってくる
赤毛のジイサン かみさんを呼ぶけど
かみさん指を突き立てるだけ

あたしと結婚したんだから、このろくでなし
メシ代くらい稼いでおくれよ
分かったかい!
子供が可哀想だよ 食わせて着せなきゃ
分かったかい!
稼ぐのさ、でないとひどいことになるよ
だめなら自分で稼ぐからね!
あんた聞いてんのかい!
稼ぐんだよ、赤毛のジジイ
稼ぐんだよさっさと、恥知らず!
えっ、稼いだのかい!
ジジイ、泥棒はなしだよ
揺りかごでも揺すっといで、さあさあ
揺りかごだよ、ジジイ、揺らしな、
分かったかい!

あたしが若くてさあ
まだキレイだった頃にゃ
エプロンを吊るしたもんさ
窓の枠の上に
そして窓から顔を突き出してさ
絹のレースの刺繍をしたもんさ

さあセミョンにイワン、
カフタンの上着を着てさ
あたしと一緒に出かけようじゃないか!
さあさ踊りに出かけようじゃないか!
ホイ、ホイ、ホイ、ホイ、ホイ、ホイ、ホイ、ホイ、ホイ、ホイ、

ホーイ、ホップ、ホップ、ホパークよ
あたしが惚れたのはコサックよ
でもヨボヨボのジジイだし
おまけに赤毛でブサイクなの
こんなもんで話はおしまいよ、ホイ!


ボリス・クリストフやニコライ・ギャウロフなどの男声で逞しく、力強く歌われているものの方が歌の雰囲気に良く合っていたので男性のことを歌ったもののように思っていたのですが、この曲歌詞を良く見ると威勢のいいオバサンが亭主を「オイボレ」だの「ブサイク」だのと罵った挙句に男友達と飲み歩きに出かけてしまうという、世の中の(一部の)男性諸氏には何とも身につまされる歌だったのですね。EMIにあるヴィシネフスカヤの歌にロストロポーヴィチの伴奏という絶妙の演奏(EMI)でこの女声によるホパークは聴くことができます。とにかくスゴイです。ロシアの女性は逞しい...
思春期の不良息子(娘もか?)がよく父親を呼ぶみたいに、ここでは「ジジイ」の呼び方で揃えてみましたがそんなところは私も身につまされてしまいます。ただ私の場合は「ジジイ」と呼ばれるところよりも「メシ代くらい稼いでおくれよ」のところによりズキっとくるものがありますが皆様はいかがですか?
この詩、ウクライナの大詩人タラス・シェフチェンコ(1814-1861)が書いたウクライナのコサックたちの物語詩「ハイダマキ(ガイダマキ)」から取られた、と資料にはあります。内容はウクライナのコサックや農民たちがポーランドの圧制と戦うお話のようですが、そこにこの詩がどのように使われたのかの詳細は分かりませんでした。このウクライナ語の原詩をロシアの詩人レフ・メイが翻訳したものにムソルグスキーは曲を付けています。
ホパークというのはウクライナあたりの激しい2拍子の踊りのことで、この曲もそんな激しいリズムと歌に特徴があります。踊りの合間にこの歌でも聴かれる「ホップ」という掛け声が掛けられることからホパークという名前がついたのだとか。この曲でも冒頭のピアノ伴奏からなんだか蒸気機関車が爆走しているようなインパクトのあるリズムで始まったかと思うと激しい掛け声とともに歌が始まります。

ヴィシネフスカヤよりもずっと可憐な声でミスマッチといえばそうなのですが、この曲の歌詞のオリジナルの出所と同じウクライナ出身のソプラノ、ネタニア・ダヴラツの歌うこの歌もこうしてみるとなかなか興味深いところです。可愛い女性でも化けるときは化けるぞ、ということもあるんでしょうかねえ。

歌詞でいくつか補足すると、「かみさん指を突き出すだけ」のところの原詩にある指を突き出すしぐさkukish(クーキシ)というのは相手を侮蔑するジェスチャー。拳の指の間から親指を突き立てるもののようです。またエプロンを窓に吊るしてレースの刺繍をするのは調べ切れませんでしたが恐らく若い男に媚びるプリッコ的なメッセージでしょう。カフタンというのはトルコなど中近東のあたりの民族衣装で丈長の上着のこと。同じムソルグスキーの「蚤の歌」でも王様がノミにカフタンの上着を作れ、と命じるフレーズがあります。けっこうロシアでも一般的な衣装なのでしょう。

( 2006.12.12 藤井宏行 )


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