Ne iskushaj menja bez nuzhdy |
わけもなくぼくを誘わないで |
Ne iskushaj menja bez nuzhdy Vozvratom nezhnosti tvoej: Razocharovannomu chuzhdy Vse obol’shchen’ja prezhnikh dnej! Uzh ja ne verju uveren’jam, Uzh ja ne veruju v ljubov’, I ne mogu predat’sja vnov’ Raz izmenivshim snoviden’jam! Slepoj toski moej ne mnozh’, Ne zavodi o prezhnem slova, I,drug zabotlivyj,bol’nova V ego dremote ne trevozh’! Ja splju,mne sladko usyplen’e; Zabud’ byvalye mechty: V dushe moej odno volnen’e, A ne ljubov’ probudish’ ty. |
わけもなくぼくを誘わないで あなたの昔のような優しげなそぶりで。 夢から醒めた男には関係ないのさ 過ぎ去ったかつての誘惑などすべて! ぼくはもう誓いなど信じない ぼくはもう愛も信じない それにもう身を任せることはできはしないのだ 一度裏切られた夢には! この言葉にならない憂いを増さないでくれ 過ぎ去ったことを蒸し返さないでくれ そして親切な友よ、病み疲れた この男のまどろみを放っておいてくれ ぼくは眠る、ぼくにはこのまどろみが心地よいのだ 昔の夢は忘れてしまえ! ぼくの心をかき乱すものがあっても あなたが呼び覚ましているのは愛ではないのだから |
バラートィンスキーの原詩の題はRAZUVERENIE(幻滅)という何とも身も蓋もない題名ですが、グリンカの歌曲では最初の一節を取って「ゆえなく私を誘うな」という題になっています。また作曲者の付けた副題かどうかは分かりませんが「エレジー」という題で呼ばれることもあります。
まあ原詩の題からも予想がつく通りかなりいじけきった歌ですが、音楽はほのかに明るさを漂わせながらしんみりと沈むグリンカにお得意のもの。彼の歌曲の中でもよく取り上げられる人気作です。
クリストフやネステレンコといったバス歌手が悲しげにしみじみと歌うのが味があって個人的には好きなのですが、男心を歌うにも関わらず女性歌手によって取り上げられることも多く、多分今でも入手が容易であろうと思われるソプラノのビブラ・ゲルズーマワのものなど溜息が出るほど美しいです。
( 2006.12.03 藤井宏行 )