Automne Op.18 Trois mélodies |
秋 3つのメロディ |
Automne au ciel brumeux,aux horizons navrants. Aux rapides couchants,aux aurores pâlies, Je regarde couler,comme l'eau du torrent, Tes jours faits de mélancolie. Sur l'aile des regrets mes esprits emportés, -Comme s'il se pouvait que notre âge renaisse! Parcourent,en rêvant,les coteaux enchantés, Où jadis sourit ma jeunesse! Je sens,au clair soleil du souvenir vainqueur, Refleurir en bouquet les roses deliées, Et monter à mes yeux des larmes,qu'en mon coeur, Mes vingt ans avaient oubliées! |
秋、空にたちこめる霧、物悲しい地平線 急いで沈む太陽、蒼白い夜明け 私は流れ行くのを見る、まるで急な水の流れのように 憂鬱で埋まったお前の日々が 後悔の翼に乗せて、私の精神は -まるで私たちの歳が若返ったかのように 飛び回る、夢見るように、この魅惑的な坂道を その昔、私の若さが微笑んでいた坂を 私は感じる、誇らしい思い出の明るい太陽を受けて 繊細なバラの花が、再び一団となって花開くのを そして私の目に涙があふれてくる、それは私の心が この20年間すっかり忘れていたことだった! |
フォーレと秋というのはなかなかしっくりとくる取り合わせでしょうか。ボードレールの詩につけた「秋の歌」も素晴らしいですが、もう1曲シルヴェストルの詩につけた歌曲にも「秋」というタイトルのものがあります。
この詩は、同じ詩人が書いた テスタメント(遺言)に通じる内容です。あちらでも飛んでいましたけれども、この詩でも後悔の翼が飛びまわっています。これは舞い散る落ち葉でしょうか、そのイメージで心は宙をさまよっています。とは言いながら暗さばかりでなく、太陽の光や遅い秋のバラもこの季節には輝いていました。そんな中で詩人が感じているのは歳月の流れ。クルト・ワイルの傑作「セプテンバー・ソング」が思い起こされるように、人生の秋をしみじみと噛み締めているのでしょう。まだ作曲当時は若かったフォーレですが、なかなか良い雰囲気に仕上がっています。伴奏のピアノの連打、特に低音の響きが印象的でしみじみとした秋の情景を描写してくれています。
フォーレの代表作という程でもない曲なので、全集以外ではあまり聴けないですが、この曲、古いSP録音ではソプラノのニノン・ヴァランの名唱があります。ちょっとスタイルの古さを感じなくもないですが、この濃厚なロマンティックさは一聴の価値あり。彼女の濃密な「夢のあとに」や「月の光」などと一緒にどうぞ。
( 2006.10.28 藤井宏行 )