Barcarolle Op.7 Trois mélodies |
ふなうた 3つのメロディ |
Gondolier du Rialto Mon château c'est la lagune, Mon jardin c'est le Lido. Mon rideau le clair de lune. Gondolier du grand canal, Pour fanal j'ai la croisée Où s'allument tous les soirs, Tes yeux noirs,mon épousée. Ma gondole est aux heureux, Deux à deux je la promène, Et les vents légers et frais Sont discret sur mon domaine. J'ai passé dans les amours, Plus de jours et de nuits folles, Que Venise n'a d'ilots Que ses flots n'ont de gondoles. |
おいらはリアルトのゴンドラの船頭 おいらの城、それはこの入り江で おいらの庭、それはこのリド おいらのカーテンは月の光さ この大きな運河の船頭には 灯台の代わりのわが家の窓があって そいつは一晩中点いているのさ お前の瞳は黒いよ、おいらのかあちゃん おいらのゴンドラは幸せ者用 二人、また二人と、乗せて漕ぐ 軽くさわやかな風は ほほをそっとなでる おいらの恋は数知れない 来る日も来る夜も幸せだった そいつぁこのヴェニスの島の数より多く この運河に浮かぶゴンドラよりも多かったのさ |
力強く舟を漕ぐヴェネチアの水夫は朗々と短調の舟歌を歌います。これもあんまりフォーレっぽくない曲で、初期にいろいろなスタイルを試みた作品のひとつといったところでしょうか。日本で言えばトラックの運転手さんなんかが「あなたの〜けしてお邪魔はしないから〜」なんて具合にカーステレオをガンガンかけ、演歌を歌いながらドライブするようなシチュエーションで出てくる感じの歌が、多少の俗っぽさは装われているとはいえフォーレ流の上品なアレンジなので、けっこう聴いていても面白いです。あまりイタリアの雰囲気はないですけれども...
リアルトというのはヴェニスの観光名所として有名なリアルト橋のことでしょうか。この橋のあたりがリアルトと呼ばれている地名のようです。またリド、とあるのはヴィスコンティの映画「ヴェニスに死す」でもおなじみのヴェネチアの南にあるリゾートのリド島。この島まではこんな風なゴンドラに乗っていくのだそうです。2節目の最後のこの船頭の妻の話が出てくるところがほのかに長調に転調するところや、最後の恋は数知れずのところがやはり長調で安らかに終わるところなどはなかなか素敵で聴き惚れてしまいます。こういう歌ならジェラール・スゼーの独壇場でしょうかね。
最後の節がやや腰砕けの訳になってしまいましたが、できるだけ働くおじさんの歌っぽく言葉を選んでみました。
こういう歌詞のフォーレ歌曲があるっていうのも面白いと思いませんか?
( 2006.10.21 藤井宏行 )