馬のひづめの痕が 続・歩行について |
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馬のひづめの痕が二つづつ ぬれて寂まつた褐砂の上についてゐる もちろん馬だけ行つたのではない 広い荷馬車のわだちは こんなに淡いひとつづり 波の来たあとの白い細い線に 小さな蚊が三疋さまよひ またほのぼのと吹きとばされ 貝殻のいぢらしくも白いかけら 萱草の青い花軸が半分砂に埋もれ 波はよせるし砂を巻くし 白い片岩類の小砂利に倒れ 波できれいにみがかれた ひときれの貝殻を口に含み わたくしはしばらくねむらうとおもふ |
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( 2019.11.03 藤井宏行 )