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Sur les lagunes   Op.7-3  
  Les Nuits d'Été
入り江にて  
     夏の夜

詩: ゴーティエ (Théophile Gautier,1811-1872) フランス
    La Comédie de la Mort  La chanson du pêcheur

曲: ベルリオーズ (Louis Hector Berlioz,1803-1869) フランス   歌詞言語: フランス語


Ma belle amie est morte,
Je pleurerai toujours;
Sous la tombe elle emporte
Mon âme et mes amours.
Dans le ciel,sans m'attendre,
Elle s'en retourna;
L'ange qui l'emmena
Ne voulut pas me prendre.
Que mon sort es amer!
Ah! sans amour s'en aller sur la mer!

La blanche créature
Est couchée au cercueil;
Comme dans la nature
Tout me paraît en deuil!
La colombe oubliée
Pleure et songe à l'absent;
Mon âme pleure et sent
Qu'elle est dépareillée.
Que mon sort est amer!
Ah! sans amour s'en aller sur la mer!

Sur moi la nuit immense
S'étend comme un linceul,
Je chante ma romance
Que le ciel entend seul.
Ah! comme elle était belle,
Et comme je l'aimais!
Je n'aimerai jamais
Une femme autant qu'elle
Que mon sort est amer!
Ah! sans amour s'en aller sur la mer!


俺の可愛いあのこは死んじまった
俺はずっと泣くばかり
墓の下にあの娘は持って行っちまったんだ
俺の魂と恋心を
天国へと 俺を待たずに
行ってしまったんだ
あの娘を連れて行った天使は
俺を一緒には連れて行かない
なんというむごい運命
ああ、愛もなく 海に出なければならないとは!

白い肌をしたあの娘は
柩の中に眠っている
周りのものはまるで
みな喪に服しているようだ
残されたハトは
なくしたつがいを思って鳴く
俺の魂も泣き
あの娘をなくしたことを感じる
なんというむごい運命
ああ、愛もなく 海に出なければならないとは!

俺の上では、この果てしない夜が
まるで死に装束のように広がっている
俺はロマンスを歌うが
それを聴くのは夜だけだ
ああ、あの娘はなんて綺麗だったのか
俺はどれほどあの娘を愛していたことか
あの娘を愛したほどには
俺はだれも愛せない
なんというむごい運命
ああ、愛もなく 海に出なければならないとは!


フォーレが同じ詩につけたこの歌曲も(フォーレにしては)濃密な情緒が印象的でしたけれども、ベルリオーズのつけたこの曲の濃さには到底かないません。一介の漁師の嘆きというよりはまるでオセロとかヘラクレスが嘆いているかのような荘重さ。フォーレの歌曲のような優美さはないかも知れませんが、美しいメロディが次々と繰り出されてくるその音楽は圧巻です。
中間の「白い肌をした」のところでやすらぎに満ちた長調のメロディに変わるところがはっとするような驚きに満ちて大変印象的ですが、すぐにまた荘厳な悲しみの音楽になります。

この歌曲集「夏の夜」女性歌手が全部通して歌うことが多く、この男声が歌った方が合っている詩と曲想とのこの曲を私が男性歌手によるもので聴くことができたのはバスのフォセ・ファン・ダムが歌ったもの(彼が歌曲集全曲歌っています)。ジャン・フィリップ・コラールのピアノ伴奏によるもの(EMI)と、セルジュ・ボド指揮のスイス・イタリア管(ルガーノ)によるオーケストラ伴奏盤(Forlane)とがありましたがいずれも絶妙な解釈と演奏です。この曲に関してはピアノ伴奏版の枯れた味もけっこう捨てがたいものがありました。

( 2006.04.14 藤井宏行 )


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